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「Aちゃん美味しい？」
『はい。すいません…朝食まで頂いてしまって』
「遠慮することないよ。Aちゃんに食べて欲しくて作ったものなんだから」
散歩の途中で立ち寄った公園。
コンビニで朝食でも買おうと思っていた私に、ジンさんが食べてと手作りのサンドイッチを渡してくれた。ふわふわの卵焼きにベーコンとレタス。シンプルだけど、マスタードの辛味がいいアクセントになって、とても美味しい。
『ジンさんは食べないんですか？』
「僕は美味しそうに食べてるAちゃんを見てたいから」
そんなこと、目を見つめて言わないで。
優しい眼差しに、恥ずかしくなるのはいつも私の方で。
冗談だよって、カラかってくれた方がまだいい。
そうしてくれたら、笑って返せるのに。
「僕…Aちゃんのこと困らせてる？」
『え…』
「なんか複雑な表情してる。部屋に押しかけたりするのも、毎日のように料理を持って行くのも、本当は迷惑なんじゃないかって…」
『そんなことは、ジンさんの手料理…その、私好きです…』
「やだなー、僕が好きだなんて。Aちゃんからの告白なら、僕の返事はYESしかないよ。今日…Aちゃんの部屋に泊まってもいい？」
ジンさんの落ち込みように、優しい言葉をかけたらすぐにこれだ。
本当に落ち込んでいたのかも怪しい。
でも、ジミン君が言っていたようにジンさんはいい人だって、一緒に過ごしているとわかる。お年寄りと仲良く談笑している姿や、近所の子供達と遊んでいる姿。
奥様方から囲まれてモテモテだったり。
別に…いいんだけど。
「どうかした？僕の顔見つめて」
『何でもありません…』
ジンさんがモテていても私には関係ないじゃない。
私はジンさんの彼女でもないんだから…。
「Aちゃん」
『な、なんですか…』
不意に伸びてきたジンさんの指先が、私の唇をなぞる。
「ここ、マスタード付いてるよ」
私の唇の端を拭ったジンさんは、チュッ、と音を立ててその指先を舌で舐め取った。
『ジンさん！？』
「Aちゃんの顔真っ赤。直接キスしてあげてもよかったんだけど。もしかして、そっちの方がよかった？」
もう、なんなのよ…！
些細なジンさんの仕草に、振り回される。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
