21 JNside ページ22
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抱きつかれた衝撃で、買ってきたスーパーの袋をその場に落としてしまった。雑な扱いをしてしまった食材達に謝りつつも、柔らかな感触を背中に感じてなんとも言えない。
「ど、どうしたの！？」
『ジンさんの香り…安心できて好きなんです…』
「それって柔軟剤の香りかな？アロマ成分入ってるから落ち着くのかも」
この状況に僕は全然落ち着かないけど。
Aちゃんからスキンシップしてくれるなんて。
『それだけじゃないんです…相手がジンさんだから…』
「そ、そう…、」
聞いた？
聞いたよね？
いや、僕も誰に問いかけてるのかわかんないけど。
それより素っ気ない返し方しかできない自分が情けない。
あの塩対応なAちゃんからの急なアプローチに動揺して。
「仕事で何かあった？」
『少しだけ…』
「変な男に迫られたりしてない？」
主にヨンって男に、と聞きたい気持ちをグッと堪えた。その名前を出してしまったら僕がAちゃんの身辺を探っていると知られてしまう。あくまで素知らぬ振りを貫き通さないと。
と言うか、まさかそのヨンって男Aちゃんに何かしたんじゃ…。
だからAちゃんはその嫌な気持ちを紛らわせようと大胆な行動に。
『大丈夫です…』
「本当に？」
『はい…ジンさん心配症ですね』
「Aちゃん限定だけど。何かあったらすぐに言うんだよ。Aちゃんは僕にとって大切な人なんだから」
『大切な人…』
いつもみたいに迷惑そうな顔をAちゃんはしない。
それよりも顔が赤くなっていく。
「あのー、本当にAちゃんだよね…？」
『どう言う意味ですか？』
「その…なんか反応がいつもと違うから。僕を抱きしめてきたり、僕の言葉に顔を赤くしたり。カラかってるのかなと思って」
『カラかうなんてそんな……私がジンさんに触れたかっただけなんです…』
「Aちゃん…」
振り向いて抱きしめようとすれば、それに気づいたAちゃんが慌てて僕の体を離した。
『私…すいません…！』
「あ、Aちゃん待って！」
部屋へと続く階段を駆け上がって行ってしまったAちゃんに、僕はぼうっとしたままで動く事が出来ない。
「期待するなって……期待するようなことしたのAちゃんだよ…」
知ってる？
Aちゃん以上に、僕が君に触れたいって思ってること。
好きだって、君を独り占めしたい。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
