02 ページ3
.
「熱いからね。僕がふーふーしてあげようか？」
『結構です』
バランス良く鍋の具材をお椀に盛り付けてくれるジンさんは、結構ですと断ったのにふーふーと白い頬を大きく膨らませて、冷ましてくれる。「ここ、僕の唇が付いた場所だから」と何かを期待するような目で見られ、私はその場所を避けるように食べ始めた。
「間接キスぐらいいいじゃないか」
『故意にされるのは嫌です』
「じゃあ自然なら問題ない？」
『………』
「はいはいわかりましたよ。そんな可愛い顔で睨みつけられても、僕はちっとも怖くないから。テヒョンのような目力のある人なら、僕は震え上がるだろうけどね」
はぁ…住む場所を紹介してくれたテヒョンには悪いけど。
めんどくさい管理人がいるってこと、初めに教えといてよ。
見学だけのつもりが、あっという間に承諾されて。
今に至るわけだけど…。
「Aちゃんも良い意味で初対面から変わったよね」
『そうですか？』
「僕に対して恥じらう様子が全くなくなった。むしろ塩対応になった」
『それはジンさんが強引過ぎるからで…、』
「そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」
ジンさんが何を言いたいのかわからない。
プライベートに踏み込まれると、塩対応にもなってしまう。
「Aちゃんは優しい子だね。嫌な顔してても、結局は僕に付き合ってくれるんだから。それがなんか…僕にとっては嬉しいんだ。ここに来てくれてありがとう。ここに住んでくれてありがとう。僕を構ってくれて…ありがとう」
柔らかい笑みを浮かべ私を見つめるジンさんに、どうしていいのか分からず私は目の前の料理に視線を落とした。
不覚にもドキッとしてしまった。
頬に熱が集まるのは、温かい鍋のせい。
多分…きっとそう。
「それで会社の後輩ってどんな子なの？ふわふわした女の子らしい子？挨拶のできる礼儀正しい女の子？」
『どうして後輩が女の子限定なんですか？』
「………まさか」
『少し人見知りのある、』
「男なのかい！？そんなバカな！Aちゃんに男の後輩を指導させようとする人事部に、僕は物申したい！ダメだ、ダメだそんなの！！可愛いAちゃんの貞操が僕よりも先に奪われるなんて、そんな事があっていいはずない！Aちゃん、その男を僕の前に連れて来るんだ！」
連れて来るんだ、と言われても。
私…後輩のチョン君の連絡先知りません。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 913人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
