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「お昼誘って迷惑じゃなかった？」
『いえ、仕事の話があるんですよね？』
「それだけじゃないんだけど…」
隣の課に配属されてきたヨンさんは私より二年先輩。営業成績は常にトップで上司からの人望もあり、親しみやすく面倒見がいいことから後輩にも慕われている。華やかなルックスは目を惹き、密かにヨンさんを狙っている女性社員も多い。
私とは関わる事もないと思っていた相手。
だから余計に緊張する。
「イさんとは仲良くしたいと思ってるんだ」
『私も仕事のこととか色々と先輩に教わりたいと思ってます』
「仕事だけ？俺の言葉には、プライベートも含まれてるんだけど」
『プライベート…ですか？』
目の前の食事に手をつける事もなく、ヨン先輩の視線は私の顔に注がれる。じっと見つめられ、あまりの居心地の悪さに口に入れた食事も美味しく感じない。
「Aちゃんって呼んでもいい？」
『でも…職場内で名前呼びは…、』
「職場外ならいいよね？これから長い付き合いになりそうだし、二人だけで食事もしたい。Aちゃん、今付き合ってる人いる？」
『あの、仕事の話をしませんか？』
「そんなのいつでもできるから。俺、Aちゃんに興味があって、今回の企画に君の名前出した。日頃の態度もあってか、上司は二つ返事でオッケーしてくれてさぁ」
スッと伸びて来たヨン先輩の手が、スプーンを握る私の手に重なる。
「Aちゃんの手、小さくて可愛い」
『っ…、やめて下さい…！』
重ねられた手を払い、私は触れられないよう膝の上に手を置いた。
ドキッとするより、不快に感じる。
初対面にして、口説くような台詞。
相手の気持ちを無視して、触れてこようとする無神経さ。
ジンさんなら同じ台詞でも嫌だと思わない。
触れられたら、今の私ならきっと恥ずかしくなってしまう。
「その反応付き合った経験ない？」
『いい加減にしてください…！仕事の話があると言われたから私は付いて来たんです』
一人にしてきたチョン君の事も心配なのに…。
一緒にお昼食べれないって伝えた時のチョン君の寂しそうな顔。
こんな無駄な時間を過ごすなら、来なければよかった。
「ごめん。仕事の話するからそんなに怒らないでよ。Aちゃんには嫌われたくないから」
反省してるのかも疑わしいような笑顔に、この場に居るのが苦痛に感じた。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
