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乱れた呼吸を整え、ジンさんの部屋のドアを開けた。鍵はかかってないこと、ジンさんは寝室で寝ていると、テヒョンから聞かされていた。『お邪魔します…』と声をかけ、右奥にある寝室部屋へと廊下を歩く。
普段はジンさんが私の部屋に来るから。
ジンさんの部屋に入るのは、今日が初めて。
寝ているジンさんを起こさないよう寝室のドアを静かに開け、カーテンで遮られた薄暗い部屋にベッドに近づく。
『ジンさん…』
布団から覗くジンさんの額には包帯が巻かれていた。
色白な肌が、今日は蒼白に見えて。
そっと手を伸ばして、ジンさんの頬を撫でてみた。
「ん……A…ちゃん…？」
『すいません…起こしてしまいましたか？』
「ううん…平気…。それよりも…来てくれたんだね…」
『ジンさんが倒れたってカトクがテヒョンからきて…それで、』
詳しい理由も聞く暇もなく、気づいたら走りだしていた。
ジンさんに何かあったらって、たまらなく不安で、無事でいて、とただそれだけを願って。
「体起こすの手伝ってくれるかな？」
『あ…はい…』
ジンさんの肩に手を回して、抱きつくような格好で体を支える。
触れて感じた事は、逞しい体付きに、ジンさんの服から香る柔軟剤の優しい匂い。
「Aちゃん…僕の為に走って来てくれたの？」
『それは…』
私の首筋を流れ落ちる汗を、ジンさんの指先が拭う。
『っ…、』
「どうして僕から離れようとするの？」
『私…その…汗かいてるので…、』
汗臭くないだろうか、恥ずかしくて距離を取ろうとする私の腕をジンさんは掴み、自分の胸へと私の体を抱き寄せた。
『あ、あの…』
「こんなに必死になってくれるのは、僕だからって…期待してもいい？勘違いじゃないって言うなら、僕だけのモノになって欲しい。僕の気持ちを知ってるなら、答えて欲しい。Aちゃんを他の男に奪われたくないんだ」
こんな時困るのは、普段とのギャップ。
明るいノリで言ってくれたらいいのに。
不意に見せる大人の表情。
大人の色香。
『ジンさん、』
「ダメだよ、返事を聞くまで逃がしてあげない」
返事を聞くまでって、ジンさんの視線が私の唇に注がれる。
私の視線もジンさんの唇に注がれていて。
拒むなら今しかない。
それなのに近づいてくるジンさんの整った容姿に、私は目を閉じた。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
