white 66 ページ33
「あの、そういえばチャニョルくんに謝りたくて」
「え？」
「私の考えを押し付けすぎたから。本当にこの前のことは忘れてください」
準備していた言葉は言えた。意外と簡単だった。
チャニョルくんはさらに黙り込んでしまった。
しかし私としてはすっきりしていた。ちゃんと言えた。印象が悪い女の記憶、として残らなくなっただけでもいいかなと思った。これもまた自分勝手だけど、仕方がないでしょ。
ただ一方で、どんどん近づく駅に、焦りも感じていた。もう今日で終わりなのに、チャニョルくんは口を開かなくなった。
「大丈夫？」
あまりにも話さないものだから問いかけると、私をじっと見た。
そして口を開いた。
「話したくないんじゃなくて、話せなかったんだよ」
チャニョルくんの目は少し潤んでいるように見えた。意外な言葉に、少し固まってしまった。だけど、事実であることは彼の表情から確かに伝わってきた。
チャニョルくんは、駅ではなく近くの公園の方に歩き始めた。私も黙ってそれについていく。公園のベンチはちょうど空いていて、2人で一緒に腰をかけた。
空はもう、紫色になり始めていた。
「Aちゃんが俺に心を開いてくれた、って実感した時は本当に嬉しかったんだよ。素直に共感してたし、Aちゃんのことが全部わかった気がして」
チャニョルくんはそう話し始めた。私はチャニョルくんがしたように、黙って話を聞いた。
「だけど、自分のことは言っちゃいけない気がした。やっぱり、嫌われてしまうのが怖かったから。俺は表裏が激しいと自分で思ってるし.....
それに、その時からもう、スヨンとは付き合ってたから、話す資格もないんじゃないか、って」
「チャニョルくんは....スヨンちゃんの事が好きなんでしょう？」
口を閉じたチャニョルくん。
困ったように眉を寄せて、俯いた。私には答えを戸惑う理由が分からなかった。
「こういうこと言ったら、きらいになるよね」
「なに....? 」
チャニョルくんは決心したように、目を向けた。私は正直怖かったけど、向き合えている実感は嬉しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よるちー | 作成日時：2016年8月13日 1時
