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一緒に下校も終わり、登校も避けて、関わりが無くなれば、気持ちも治まっていく。
このまま夏の課外も終わって、何もなかったようにチャニョルくんに会わなくなればいいんだ、と彼の後ろ姿を見ながら何度も考えた。
他の誰よりも背丈が高いのに、彼は一番前だから誰よりも飛び抜けていて、よく見える。 丸まった背中に張り付いたシャツは汗ばんでいた。
そんな後ろ姿を毎日見ているだけで十分だったのだ。 私の頭と心は、案外物分かりがいい。 抑えようと思えば抑えられる、そんな賢い頭なのだ。
＊
「おはよう、あのー、Aちゃんが好きって言ってた歌手のCD貸してくれないかな？」
そう、突然話しかけられたのは私が彼のことを忘れ始めたときだった。
いつぶりだかわからない会話に戸惑いながら、こくこくと頷くことしかできなかった。
それを機に、また前のように話すことになった。
ーーー
かすかなときめきを感じながら、普通に話せていることへの喜びが身にしみた。
話すだけならいいじゃないか。だってきっかけを作ったのはチャニョルくんなんだから。そう言い聞かせて話す機会を最大限に楽しんだ。
私たちは決まって、昼休みに授業がない1年生の階の一番奥の教室で話をする。
チャニョルくんがオススメしてくれた音楽の感想を伝えた。
「結構好きだったよ、オススメしてくれた曲」
「ね、でしょ？あの曲は本当にAちゃんが好きだろうって思ったんだ」
興奮気味にそう答えたチャニョルくんによくわからない愛しさみたいなものが湧き出す。
自分でも知らぬ間に笑みがこぼれる。
「なんで笑ってんの？」
「チャニョルくんって、たまに少年みたいに感情全開になるのが面白なあって思って」
こんな感想は少し前の自分ならどう思われるかが怖くて絶対に言えなかった。
こうやって伝えられるのも、距離が確実に狭まっていることの証だと思う。
チャニョルくんは照れているような、それでもって少し怪訝そうな表情をしたので私は首をかしげた。
「姉さんにそれがきもいって言われて抑えるようにしてたんだけど.....」
確かにチャニョルくんずっとニコニコしていて、ある意味表情が変わらない。そういう理由があったんだなあと思う。
「全然キモくないよ？ 私は面白いと思う」
「面白いってなんだか....ねえ」
会話をしていると、あっという間に時間が流れる。もう少しで教室に戻らなければいけない。
こんな短く何もない時間が愛おしいものに思えて、なんだか胸が痛かった。
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作者名：よるちー | 作成日時：2016年8月13日 1時
