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その日から、少しずつチャニョルくんと話すようになった。
「あれ、今日は髪結んでるね」とか「ネクタイがないね」とか、本当に小さなことを見つけ合うだけだけど、それが勉強漬けの日々の中で細やかな楽しみみたいなものになった。
そして、一緒に帰ったこともあった。
お互いに久しぶりだね、って懐かしみ合っていると、キムソヨンのことについて聞かれたから、少しびっくりした。
だけど、凄く話したい衝動に駆られて、結局こうなった経緯を話した。
チャニョルくんは黙って聞いてくれた。
話し終わると、彼は真顔で、「結構人間って自分勝手だよね」とひとりごとのように呟いた。
「私だけがそう考えてると思ってたから少しホッとしたっていうか....」
「いや、それで悪口言われてちゃ、腹がたつのもわかる」
いつになく真剣で、トレードマークのだと言える笑顔は全くなかった。
だけど私は嬉しいと思った。むしろありがたかった。
自分の気持ちに共感してくれるひとがいたこと。
いつも私の選択肢はギョンスしかなくて、ギョンスは受け止めてくれるけど、私とは考え方が根本的に違う。
ギョンスは客観ができる人で私のように小さなことで悩んだりしない。
だから自分と似たチャニョルくんには自分をより理解してもらえる気がする。
「話してくれてありがとう、」
「こちらこそ聞いてくれて嬉しかった」
チャニョルくんは考えが深い人だなと思う。
私の感じたことに上乗せでより深層な思考を持っているから。
ますますそんなところに魅了されているから完全に心酔してしまっている。
チャニョルくんといるとなんでも話してしまいそうになるんだ。
＊
いつのまにか一緒に帰りながらいろんな話をする仲になっていった。
チャニョルくんと私は時間をずらして教室を出る。
そして昇降口で合流する、という毎日。
「チャニョルくん、お待たせ」
「いや、全然」
チャニョルくんが微笑んでくれる。
だけどそれは昔のように愛想を振りまくような笑顔じゃない。少しだけ互いの見えない理解がそこに存在している気がするのだ。
それを実感できていることがなんだか誇らしかった。
夕方になっても汗が背中から滴り出る暑い夏。
手が触れそうな距離に好きな人がいる。
シアンに白が散りばめられた、気持ちがいい空を見上げた。
ああ、この光景は目に焼き付いて忘れることはないだうなあ。
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作者名：よるちー | 作成日時：2016年8月13日 1時
