white 36 ページ3
早速数学の教科書を出して苦手な分野を開く。
私は指数関数が本当に苦手だ。
これが分からない、とペンで指すと、チャニョルくんが顔を寄せて覗いてきた。
その近さに思わず後ろへ仰け反った。チャニョルくんはたまに距離感が近いな、と思う。
手が今にも触れてしまいそうな場所に彼がいる。誰もいない状況はただ、私の緊張を増やすだけだった。
嫌だ嫌だと思いながら、どうして私はこの人に逐一ときめいているのだろう。
＊＊＊
「ねえ、A」
ソアが険しい表情で私を呼んだのは二時間目の休み時間。ちょうど後ろの棚に教科書を取りに行こうとしていたときで、私は立ち止まった。
「なに？」
「Aって、朝からチャニョルくんと勉強してんの？」
「え？ああ...そうだけど」
チャニョルくんとは、人が来始めたらお互い勉強をやめて個人作業に入ることにしている。
それは暗黙のルールのようなもので、どちらともなくそうし始めた。
ソアに黙っていたわけではないけど、言わなくてもいいかなと思っていた。
ただ、ソアが課外開始ギリギリに来る頃にはとっくにお互い自席にもどっているから知らないはずなのに、どうして聞いてきたのかが不思議に思う。
「なにかあった？」
ソアは耳をかせ、と合図したのでソアに近寄る。口に耳を寄せると、ソアが小声で囁いた。
「あいつが、Aとチャニョルくんのこといろいろ言ってたから」
「え？」
あいつと言ったら多分キムソヨンのことだろう。
彼女は課外は取っていないからチャニョルくんと私のことは知らないはずだ。
「Aはチャニョルくんに媚び売ってるとか、なんか可哀想だね、とかこそこそ話してるの聞こえて...」
「もしかして日本語選択の授業のとき？」
「そう、そうなの」
ああ、そういうことか。
また私がいないところでこそこそ言ってるんだ。
身体中の血の気がサーっと引いていくのが体感できた。でも、それは怒りではない。呆れにも似た悔しさ。
お互いに何かをした訳ではなく、むしろ仲が良かったはずのキムソヨンは急に私を無視をし始めたときから、ずっと、悔しいようで哀しい気持ちにさせられている。
本当に不愉快ででもどうすることもできないことが腹立たしい。
そうやってじっとしていればまた陰口か、と思うとあいつが許せない。
「変なことされる前に気をつけたほうがいいかもね.....」
仕方ないから素直に頷いた。
でもなんで、私が気を使ったりしなきゃいけないんだろう。
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作者名：よるちー | 作成日時：2016年8月13日 1時
