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「英語を教えて」なんて言われたのはソア以来初めてだった。
チャニョルくんからの質問は主に文法問題で、私が得意だと思っている英語の中でも一番苦手な分野である。
初めは本当に基礎的な、不定詞の問題からだった。
参考書の解説を見ながらそのまま説明しただけなのにチャニョルくんは、「わかりやすい！」と盛大に褒めてくれた。
それが思ったより嬉しかった私は、次から分からなかったところを事前に聞いておいて、翌日自己流も踏まえて教える、というスタイルを取ることにした。
お互いに、待ち合わせしているわけでもないのに、同じように朝早くに来て、二人っきりの教室で勉強を始める。
「Aちゃん、今日の説明最高にわかりやすいよ」
「え？本当？」
「うん」
真顔で褒めてくれるチャニョルくんにただただ照れて、気の利いたことを言えなくなる。
文法の中でも特に苦手な前置詞問題でそう言ってもらえたのは、結構自分の自信になった気がするなあ。
「ありがとう」
私も説明し終えた問題を自分でももう一度ときながらそう答えた。
すると、少しの間、会話が消えてしんとした。書きながら、目の前にいるチャニョルくんは今何をかんがえているのだろう？と少し緊張する。
顔を上げるとチャニョルくんが、まっすぐに私を見た。
「俺、数学なら教えられるけど」と、ほのかに顔を赤らめて言った。
「う、うん、じゃあ、教えて欲しいな」
そんな、じっと目を見て、照れながら言わなくても良いじゃないか、と若干動揺しながらも、断るのは申し訳ない気がしてお願いすることにした。
チャニョルくんがぱあっと、表情に明るさが出て、ああ、嬉しいんだなって、理解したら意外と分かりやすいのかも、なんて思ったりした。
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作者名：よるちー | 作成日時：2016年8月13日 1時
