そもそもあの子は話を聞かないし周りを見ない (ページ7)

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5話:握りすぎた。ページ7

その後もその人の話は続きました。私は聞いてないようで、内容は頭の中、心の中にするすると入っていくのです。そして、話が終わると、「後はゆっくり考えてくれ。もし決意ができたらここに連絡して」と言われ、連絡先を渡されました。

その日私は壁に寄っ掛かりながら、電話番号を眺めながら物思いに耽っていました。これまでのこと、そしてこれからのことを。

これまで私は周りの人からいないように扱われ続けていた。だから私は、ここにいるよと気付いてもらいたくて、人が嫌がる作業も何でも自分で進んでやった。勉強も運動も人並み以上に頑張っていた。だが誰も、褒めてくれなかったし感謝もしてくれなかった。そうなって当たり前だ、とばかりに。

だが裏社会はどうだ？任務を熟せば有難うと言われ、頑張ったねと褒めてくれる。担任も同級生も誰もそんな事言わなかったのに、この社会は私を褒めて、認めてくれる。

私は今まで、人殺しや麻薬の受け渡しなど、自らにも危険が及ぶことをやってまで、認められたかったんだ。もしそうでなければ、私はとっくの昔に自決していた。本当はお金なんていらなかった。

そして私はその連絡先を強く握りしめると、公衆電話に向かった。迷いはなかった。