【文アル】時計【菊池寛】 (ページ4)

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時計がみっつページ4

シン、と、あたりに広がる静寂。
キョトンとした菊池先生の顔。
はあと深いため息をついてぺち、と顔の前に右手を力なく置く徳田先生。
あ～…と力なく苦笑いを浮かべるオダサク先生。

瞬間、やってしまったと後悔の水が私の中に入ってきた。バケツで頭から氷水を被った気分だ。

元来より人間という生き物は、若干の誤差はあるものの、隠し事というものが苦手な生き物である。
よく漫画や何かで「本音と建前逆になっているぞ」とかいうシーンが出てくるが、いざ自分がその当事者になってみると、その心理が痛いほどにわかる。
なるほど、これは面倒くさい。
なんせ本人の全く意識していない、無意識下にて働くのだから。脊髄反射、と言ったほうがこれはいい気がする。

さて、口に出てしまった言葉は最早取り消すことは不可能であり、まさしく「覆水盆に返らず」というやつなのだが。
何とか弁明というか、言い訳というか、主に自分に対するアフターフォローのために口を開こうとしたところで、ぷっと吹き出す声が聞こえた。
慌てて、声の主を見る。

「いや悪い、まさか会って早々に「好き」と言われるなんざ思っていなくてな」
声の主である菊池先生は、そう言ってハハハと笑った。
顔に、熱が溜まるのを感じる。熱い。恥ずかしい。
弁明をしようとした口からは、力なく「あう…」と声が漏れるばかりだった。