異世界30 ページ31
冬夜「スリップ！」
「ぐはっ！？」
ローブの男が勢い良く転ぶ
すぐさま立ち上がろうとするが、再び転んだ
「ぐうッ…！」
罪歌「あの世で罪の数を数えろ」
弓から刀に武器を転換して…
ザンッ！！
男の首を飛ばした
やがて召喚の主が死んだからか、残りのリザードマンは全部消えていった
多分だが、元いた場所に戻るのだろう
罪歌「これで終わりか…みんな大丈夫か？」
冬夜「大丈夫だよ」
エルゼ「平気、何ともない」
リンゼ「わっ、私も大丈夫です」
八重「拙者も同じく」
私達は無事だったが、襲われた方は被害が甚大だった
兵士「すまん、助かった…」
罪歌「いえ、被害は？」
兵士「護衛の十人中、七人がやられた…
くそっ、もう少し早く気付いていれば…！」
罪歌「冬夜、せめて回復魔法をかけてやってくれ」
冬夜「分かった」
そう冬夜が頷いた瞬間
「誰か！誰かおらぬか！爺が……爺が！」
全員「！」
馬車の扉を開けて、10歳くらいの長い金髪の女の子が泣きながら叫んでいた
私とリンゼが馬車に駆け寄ると、白い服をまとった女の子の他に
黒い礼服を着た白髪の老人が横たわっていた
胸からは血を流し、苦しそうに浅い呼吸をしている
「誰か爺を助けてやってくれ！
胸に…胸に矢が刺さって…！」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、懇願する女の子
彼女にとって、よほどこの老人は大切な人なのだろう
兵士たちが老人を馬車から下ろし、草むらに横たえる
冬夜「リンゼ、回復魔法は！？」
リンゼ「……ダ、ダメです…
刺さった矢が倒れた時に折れて、身体に入り込んでしまっています。
この状態で回復魔法をかけても異物が体内に残ってしまいます…
それにここまでの怪我は…私の魔法では…」
申し訳なさそうにリンゼが小さく呟く
それを聞いた女の子の顔が次第に絶望に染まり、
涙が次から次へと溢れ、震える手で老人の手を握り締めた
「…お嬢様……」
「爺…っ…爺っ…！」
「お別れで…ございます…
お嬢様と過ごした日々…何よりも大切な…私めの…ごふっ…！」
「爺！もういいからっ…！」
胸の矢さえどうにか出来れば…
どうする…どうする…！
冷静になれ……焦りは禁物だ！
冬夜「ちょっとどいてくれ！」
罪歌「！(冬夜…？)」
冬夜が馬車に突き刺さっていた別の矢を引き抜く
冬夜「アポーツ」
次の瞬間、冬夜の手の中には血まみれの折れた鏃が握られていた
！引き寄せの無属性魔法か！
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作者名：神城イサナ | 作成日時：2018年12月21日 23時
