賢い狐にご用心 Ⅱ (ページ18)

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犬が五十三匹ページ18

　
　
　
『トレイン先生？どうかされましたか』

夕方、鏡の間にじっと立っているトレイン先生を見かけた

「床が濡れている」

『床？……本当ですね。乾きかけてはいますが』

「オクタヴィネルの仕業か」

『…そうかもしれませんね。後で注意しておきますよ』

「あぁ、頼んだぞ」

…オクタヴィネルなわけないさ

寮生はリーチ君かアーシェングロット君が躾けているだろうし

あの後キングスカラー君に聞いたんだ

監督生君の契約内容を

3日後までにアトランティカ記念博物館から写真を取ってくること…

アーシェングロット君が魔法薬も渡してくれたらしいから、難しいことではないと思ったけど

簡単なことを条件にするほど彼は優しくない

きっとあのウツボ(リーチ)兄弟に妨害でもさせたんだろう

それで失敗した監督生君たちが残した跡、かな

まぁすぐに乾くだろうから放っておいても大丈夫だと思う

　
　

…アーシェングロット君のユニーク魔法

“黄金の契約書(イッツ·ア·ディール)”

契約不履行者は彼に能力を奪われる

ユニーク魔法の効果はそれだけだけど、今回のイソギンチャクたちのように彼に従わされることになる

「契約と違う」という意見は彼に通じない

全てを考慮した上で契約を結び、個人情報厳守を盾にして不利な情報は教えない

それがアーシェングロット君のやり口

そこまでして能力を奪ってどうするのだろうか

人から取らなくても君には十分な力があるじゃないか

それすらも他人の力なのかい？

君はどこまで望むの？

努力なんて僕は好きではないけど

人を見返すために努力をしている君は、

とても美しいと思うのに

何故、歪んでしまうのだろうか
　

彼の苦悩は僕には分からない

でも、理解してあげたい

支えてあげたい

“余計なお世話だ”と言われても

痛みを分かち合いたい

　
　
＿＿だって僕は教師だから