★名前 ページ1
肌を滑る指先。
触れるか触れられないかのもどかしい感覚に昂った身体は燃えるように熱くて。
『…A……俺の名前…呼んで…』
耳元で囁き、耳朶を優しく噛んだ唇はそのまま首筋に何度も口付け、全身を電流が駆け巡る。
『…紫耀…くん……』
『呼び捨てでいい。呼び捨てにして…』
『紫耀……っ!?…』
『もう一回呼んで』
『……紫耀……っ!?……っ!や…!』
名前を呼ぶたびに紫耀くんは芯を捉え貫く。
そのたびにキャパを超え堪えきれなくなった快感が涙となって景色を滲ませる。
『泣かないで』
瞼の端に口付けてくれた紫耀くんの姿がまた滲む。
『A…』
紫耀くんの声に戸惑いが混じり、触れていた身体が離れた。
この行為を嬉しいと思えない。
思ってはいけない。
『やめないで』
でも、求めてしまう。
紫耀くんにしがみつき、自分から唇を重ねた。
『A…』
呼ばれた名前に返事をせず、何度もキスを繰り返す。
歯が当たるのも構わず舌を絡ませ背中に爪を立てた。
お願い。やめないで。
思考に余白を与えないで。
与えられた瞬間に、
私はきっと、私を殺したくなってしまうから。
* * *
「……っ!!」
目の前にあったのは廉の寝顔だった。
肌に直接触れている、廉の身体。
廉に抱かれ、果てた後、抱きしめられたまま眠ってしまったことを思い出す。
最低だ。
最低だ。
最低だ。
抗いきれない快感と歓びの間にある見えない壁を越えられないまま過ぎた夜。
あの日から何度も同じ夢を見る。
紫耀くんの腕の中でとろけそうな快感に身を震わせながら何度も名前を呼ばれる私。
廉に抱かれた後にも見てしまうのか。
一時の感情に流され、
償いきれない罪を背負った。
自業自得。
せめて…隠し通すことが廉への贖罪。
「ん?A…おる…?」
「…いるよ」
まどろみながら私を抱きしめ直した廉の首筋に、そっと、キスをした。
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ミナ(プロフ) - お話し続き…嬉し過ぎます😭切ないのに綺麗で、でも芯が火照る感覚で何度も何度も読み返してます (11月24日 20時) (レス) id: c240bfb0a0 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - 私も2人の今後が気になって…楽しみです (10月31日 23時) (レス) id: a9338f0b1f (このIDを非表示/違反報告)
かな - 続きがとても楽しみです! (10月25日 22時) (レス) @page2 id: 7200219c9a (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - ずっと待ってました!更新嬉しい 名前呼ばれたい紫耀くんが愛しすぎる (8月18日 22時) (レス) @page1 id: cef13f8b70 (このIDを非表示/違反報告)
yit高梨アヤメ@新垢(プロフ) - 失礼します、オリ.フラ立っちゃってますよ〜💦 (8月16日 9時) (レス) id: 945705f77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2023年8月15日 19時