再会 ページ37
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……
遠くから音がする。
近づいてきているような気がする。
こんな雪の夜に…散歩してる人でもいるのだろうか。
変な人だったらどうしよう…。
隠れる場所を探したいけど、
寒くて身体が動かない…。
身体をより丸めて足音が過ぎ去るのを待とうとした。
けれど、足音は東屋の前で止まってしまった。
気づかれてしまった…？
恐怖と寒さで身体が震えだす。
顔を上げることができない。
早く行ってしまって。
気づかないで。
気付いたとしても、こんな雪の中ひとりで座り込んでる女のことなんて放ってさっさといなくなって。
と、祈り続けた。
けど、
「…なんで…」
声がした瞬間、祈りは途切れる。
聞こえた声に、耳を疑った。
なんで…この声が聞こえるの？
聞こえるわけない…
「仁村さん…」
私を呼ぶ、ハスキーボイス…。
顔をあげると、この１ヶ月思い出さないようにしていた人が驚いた顔で私を見ていた。
「紫耀くん…どうして…」
「…コンビニ行く途中で…」
「……」
そういえば…この公園…
家が近いと森本さんが言ってた…
言葉が続かず、重い沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは紫耀くんの方だった。
「っていうか濡れてるじゃん！こんな寒いところにいたら凍えるよ！風邪ひくよ！？
なんかなかったっけ！？カイロ持ってなかったっけ俺！あー！ない！」
紫耀くんは
おもむろに自分の着ていたダウンジャケットを脱ぐと私に被せ、
着ていたセーターを脱ぎ私の首に巻いた。
「なんでこんなところにいるの？
家は？…彼氏さんは？」
「……」
薄手のシャツ一枚になったことにも構わず、
必死の形相で聞いてきたけれど、
言葉にできなくて
首を振るしかなかった。
本当のことを言うのも、嘘を言うのも辛い。
「……」
紫耀くんも言葉に迷ってる。
「…大丈夫。
これ、ありがとう。
でも、あなたが風邪ひいちゃう…」
服を返そうと手に取ると紫耀くんに押し返された。
「いいよ。家、近いから。
あげるから…今すぐ帰って？」
「……分かった。あと少しだけいたらちゃんと帰るから」
「……」
「紫耀くんこそ、帰って？」
「……」
「仕事あるのに風邪ひいたら困るよ？お願い…。
服は今度返すから…ね？
本当にありがとう」
そう言うと、
紫耀くんは振り払うかのように私から目を背け、向こうへ歩いて行った。
そして、雪を踏みしめる足音は、次第に小さくなりやがて聞こえなくなった。
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かな - 続きが読みたいです、、 (7月24日 6時) (
レス) @page50 id: 7200219c9a (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - 更新すごく嬉しいです😭ずっと待ってました…ほんとに描写が綺麗すぎて、わたしも紫耀くんにこんなふうに思われたいです😭 (2023年5月4日 9時) (レス) id: 180ecb31f5 (このIDを非表示/違反報告)
きょん(プロフ) - 一気に読んでしまいました！惹き込まれるくらい素敵なお話です！更新楽しみにしてます！ (2023年2月19日 11時) (レス) id: 4cb7560b67 (このIDを非表示/違反報告)
小松ミナ(プロフ) - 宝物みたいに好きなお話です。更新ほんとに嬉しい（涙）ありがとうございます (2023年2月8日 14時) (レス) @page44 id: f4f49d3608 (このIDを非表示/違反報告)
小松ミナ(プロフ) - 更新すごく嬉しいです（涙）ずっと待ってたので（涙）ありがとうございます (2023年1月29日 9時) (レス) id: f4f49d3608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2021年6月17日 11時
