スイッチーsho ページ24
普段は茶色い荷物達がカラフルになってきた。
事務所の入り口に飾られた小さなクリスマスツリー。
てっぺんにある金色の星が照明に反射して眩しく光っている。
「お疲れ様でーす。伝票おねがいします」
「はいはーい!はい!」
声をかけるとベテランの事務員さんが来て、手際良く伝票処理するとさっさと机に戻っていった。
事務所にいる誰も彼もが皆電話やらパソコン作業やらに追われツリーを見ている暇もなさそうだ。
事務所に行くたび事務員さん達と交わしていた普段の会話が懐かしく感じてしまうほど、12月の運送屋は忙しいことを知った。
事務所を出ようとして、電話に向かって頭を下げている森本さんが視界に入った。
仕事が多いとクレームも増える。
荷物事故だろうか。ドライバーの態度だろうか。
俺のせいだったらどうしよう。
謝りたいけど、あの夜以来目も合わせてくれなくなったから、声をかけることができない。
森本さんの中にあるであろう女のプライドを傷つけてしまったんだから仕方ない。しかも思い切り。
断るにしても他に言いようがなかったのかと反省したけれどすべては後の祭り。
今は、俺が何を言っても森本さんには届かないだろう。
休憩室に戻ると、神宮寺くんが畳のスペースで寝転がってスマホをいじっていた。
「おつかれーっす」
「なぁークリスマスの夜なにしてるー?」
画面から目を離さないまま神宮寺くんが言う。
「特に予定ないから櫻井さんの店でも行こうかなと」
「俺も行く!!
偶然にも独り身の美女がカウンターに座ってねぇかなぁ」
「そんなドラマじゃあるまいし笑」
「あるかもしれねぇじゃーん!
夢くらい見させてくれよぉー!
はぁーあ、今年も彼女のいないクリスマスかー」
「神宮寺くんだったらすぐにできるでしょー
このコミュ力でさあ」
「…誰でもいいってわけじゃねーんだよなぁ」
スマホを見ながら神宮寺くんはつぶやく。
意外な答えに内心驚いた。
誰でもいいわけじゃないんだ…。
海ではあんなに水着姿の女子に騒いでたのに。
『神宮寺くんは茶髪の軽いチャラ男に見えて、案外仕事もきちんとこなす真面目な人だし、温厚な良い人なんだよ。
だから安心してイジれる!』
突然再生される声。
弾けるような笑い声と共に。
スイッチはそこら中に散らばっていて、
油断するとすぐに押してしまう。
許されないことなのに、、
思い出したあとはいつも、
心の奥が温かい。
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かな - 続きが読みたいです、、 (7月24日 6時) (レス) @page50 id: 7200219c9a (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - 更新すごく嬉しいです😭ずっと待ってました…ほんとに描写が綺麗すぎて、わたしも紫耀くんにこんなふうに思われたいです😭 (2023年5月4日 9時) (レス) id: 180ecb31f5 (このIDを非表示/違反報告)
きょん(プロフ) - 一気に読んでしまいました!惹き込まれるくらい素敵なお話です!更新楽しみにしてます! (2023年2月19日 11時) (レス) id: 4cb7560b67 (このIDを非表示/違反報告)
小松ミナ(プロフ) - 宝物みたいに好きなお話です。更新ほんとに嬉しい(涙)ありがとうございます (2023年2月8日 14時) (レス) @page44 id: f4f49d3608 (このIDを非表示/違反報告)
小松ミナ(プロフ) - 更新すごく嬉しいです(涙)ずっと待ってたので(涙)ありがとうございます (2023年1月29日 9時) (レス) id: f4f49d3608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2021年6月17日 11時