嵐 ページ30
窓ガラス１枚隔てた場所から聞こえてくるはずのどしゃ降りの雨音は一切遮断されていた。
いま、私の全感覚が認識してるのは耳にかかる湿り気を含んだ生温かさだけ。
紫耀くんの、吐息だけ。
世界でたった２人きりになっているような感覚に支配されそうになる頭を小さく振ると、
「やめて…」
身体を捩り巻きつく腕から逃げようとしたけど更に強い力で抱きしめられ動けない。
この感触を経験するのは２度目だ。
１度目はおでこだった。
２度目の今は、背中に感じてる。
紫耀くんの筋肉質な固い胸板。
触れた箇所から熱が広がっていく。
暑さのせいじゃない。
「…どうして…」
「好きなんだ」
「そんなこと言われても…私…」
「知ってる。全部分かってる。でも、好きなんだ…諦めがつかないんだよ…」
雨音に混じり、消え入りそうなハスキーボイスとは裏腹に、身体を締め付ける力は強くなる。
好きって…なんで…私なんかを…
わたしには廉がいる。
廉しかいないし、いらないの。
なのに…どうして…
「先に出会えていたら良かったのに」
掠れたその声は、理解の追いついていない脳を更に混乱させる。
色付く感情がまだらになって頭の中を支配していた。
どうして…いつから…どこから…？
『仁村さんの彼氏さんが羨ましい』
あのときから…？
言われてみれば、
そういえば、
今になって次々と思い当たる場面が浮かんでくるなんて。
身体中で感じる
破裂してしまいそうなほど激しく脈打つ鼓動。
これは…私の？それとも紫耀くんの…？
分からなくなるほど、２人の体で分け合う熱に頭がどうにかしてしまいそうになる。
「紫耀くん…お願い…離して…っ…！」
首に巻きつく腕を叩くと、涙が飛び散った。
分からない…。
紫耀くんがいつからどうして私を好きだったかも。
どうして泣いてるのかも。
もう何も分からないし分かりたくない。
「…離して…」
紫耀くんの息遣いを感じる中、腕の力が解かれ身体の自由を取り戻した。
離してくれた…
と、安心したのも束の間、
強引に掴まれた後頭部ごと引き寄せられた。
頬にサラサラな髪が触れ、互いの唇が触れそうになった瞬間、頭の中をよぎったのは、
廉の笑顔だった。
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こころ(プロフ) - 切なすぎて読むのが辛かなってきました…でも希望を捨てずに読みたいと思います(^ ^) (2021年5月28日 17時) (
レス) id: f2c5e943bf (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 更新嬉しいです！この先も楽しみにしています。紫耀くんの恋心が報われますように。 (2021年5月16日 3時) (レス) id: f2c5e943bf (このIDを非表示/違反報告)
そらぃ(プロフ) - ピナパルさん» 本当ですか！？なら良かったです^ ^話はそれますがこのお話大好きです！！めちゃくちゃいい話できゅんきゅんします！！お互いに更新頑張りましょ！！ (2021年3月14日 8時) (レス) id: 65c9099209 (このIDを非表示/違反報告)
ピナパル(プロフ) - そらぃさん» はじめまして。まったく気にしていないので謝っていただく必要ありませんよ！むしろわざわざ教えていただいてこちらこそ申し訳ありません>_<どうか気になさらず更新頑張ってください！(明るく言える立場じゃないのですが…) (2021年3月13日 16時) (レス) id: 9e85fabcef (このIDを非表示/違反報告)
そらぃ(プロフ) - 本当に申し訳ございません（涙）小説を私書いてるのですが、そのタイトルが桜が舞う季節になんですけどピナパルさんのこの小説とタイトルが似てしまっていて、、大変申し訳ないです…気付きませんでした。。差し支えがなければこのままにしますが…よろしいですか？ (2021年3月13日 13時) (レス) id: 65c9099209 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2019年12月29日 8時
