＜手紙＞ ページ3
Aがお母さんのお腹に来てくれたのは
そんな、大好きな大好きなお父さんとお付き合いするようになって、２年が経った春の日のことでした。
あまりにも嬉しかったから、仕事中のお父さんのところへ行って報告したとき、お父さんは泣いて喜んでくれたんだよ。お母さんもつられて泣いてしまって、２人で泣きながら、Aがこの世界に来てくれたのを祝福したこと、お母さんの中で忘れられない思い出です。
日々、お腹の中で育っていくAと会えることをお父さんはすごく楽しみにしていました。
仕事から帰ってきたら、手を洗うよりも先にお腹に手を当てて話しかけて、検診でもらうエコーの写真をお財布に入れて持ち歩いては仕事仲間の人に自慢したり、もう、生まれてくる前から親バカで、
生まれたあとはどうなっちゃうんだろう、と赤ちゃん相手に親バカしてるお父さんを想像しては、
こんなに愛してくれる人の元に生まれてこれるAは幸せ者だな、とあったかい気持ちになっていました。
A、お父さんもお母さんも、Aが生まれてくる前から、Aのことを誰よりも大切に想っていました。
３人で暮らしていく日々が待ち遠しくて仕方なかった。
お父さんにAを、Aにお父さんを、会わせてあげたかった。
11月◯日。その日は朝から晴れていて、お父さんは朝早くから仕事に出かけていきました。
いつものように、お母さんの作ったお弁当を持って、臨月に入りパンパンに膨らんだお腹を撫でて話しかけると、「行ってくるね」とお母さんにキスをして。
いつも通りの朝。
いつも通りの１日を送って、いつも通りの夕方と夜の境目にお父さんは帰ってくるはずでした。
なのに、
お父さんは夜になっても帰って来ず、電話も繋がらず、夜中になってやっとかかってきた電話の相手は警察から。
電話がかかってきたときには、もう、すべてが手遅れでした。
仕事から家に帰る途中、お父さんの近くを歩いていた幼稚園の女の子が転んだところにバイクが走ってきて…お父さんは女の子をかばってバイクの前に…
女の子はかすり傷で済んだけれどお父さんは、助かりませんでした。
正直、そのあたりの記憶は曖昧で、断片的にしか覚えていません。
ただ、お父さんがいなくなってから、心なしかAの胎動が激しくなったように思います。
まるで、絶望するお母さんに、自分の存在を忘れさせないようにしてくれていると感じていました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。どうなるんでしょうか？もう廉くんはでてきませんか？気になります。更新頑張ってください。 (2019年9月26日 22時) (
レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしてます(^^) (2019年9月26日 13時) (レス) id: c764a58878 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです。毎回本当に楽しみにしています。心温まるシーンも泣きそうになるシーンもあって毎回心を持っていかれてしまいます。これからも更新楽しみにしています。 (2019年9月24日 23時) (レス) id: 98e7cf9d85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピナパル
| 作成日時：2019年8月29日 0時
