２１歳の君。２４ ページ48
結局、花火の日から、紫耀くんは仕事が忙しく、まともに会えないまま、旅行の日を迎えてしまった。
『空港で見られるとマズイから、現地集合で』
と、紫耀くんにチケットを渡されて、ひとりで降り立ったのは、あまり聞かない名前の国の空港…。
見回しても、紫耀くんは見当たらない。
ちゃんと来てるのかな？私、待ち合わせの日間違えてないよね…？
このまま紫耀くんに会えなかったら
言葉も通じない異国の地で、迷子になるの…？
怖い…。
不安がピークに達して、
「紫耀くん…どこ…？」
つぶやくと、
肩にポンっと手の当たる感触と、
甘い香り。
振り返ると、紫耀くんがいつものフワフワスマイルで立っていた。
「…紫耀くん…」
「ごめん、飛行機の中で爆睡しちゃって、着いたの気付かなかった」
伸びをして、まだ眠たそうにしてる。
日本からのフライト時間長かったもんなぁ。。
私も少し寝てたし…。
…って、まさか、これまで寝てたってことは…。
「…ってことは、同じ飛行機だったの？」
「そういうことー。無事に来れるか心配だったからさ。だいぶ席離れてたから気付かなかったでしょ？」
「うん…。っていうか、紫耀くん！変装しなくていいの？」
よく見たら、帽子もサングラスもつけてない。
「大丈夫だよ。俺のこと知ってる人いないでしょ」
確かに、周りを見回しても日本人はいないし、みんな、紫耀くんのことを見もしてない。
紫耀くん、心なしか、気が楽そう。
「じゃ、行こ」
紫耀くんは、おもむろに私の手を握ると、空港の外へ向かって歩き出した。
外には、太陽の光に照らされた景色が見える。
…初めてだ。
初めて、太陽の下を手を繋いで歩ける。
隣を歩く紫耀くんをチラリと見ると、紫耀くんも私を見て優しく微笑んでいた。
握られた手に、ぎゅっと力が込められる。
もしかして、紫耀くんも同じ気持ち…？
そう感じたら、これまで抱えていたモヤモヤは、どこかへ行ってしまって、
ほんの少しの外への距離も、待ち遠しく感じるほど、
早く、太陽の下へ行きたくてたまらなくなった。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
