少しだけ２ー坂田 ページ40
『…。俺はいいんすよ。そばにおれるだけで』
永瀬くんは、作業してる手元を見たままつぶやいた。
綺麗な横顔。憂いてるからなおさら。
ただ、想うだけの、そばにいられるだけでいいって、なんてせつない言葉なんだろ。
こんなイケメンが、片思いしてるなんてもったいない。
安永さんも、少しは気付いてあげればいいのに。。
それで、良くも悪くも、この片思いに決着をつけて、永瀬くんが前に進めればいいのに。
そう思ってた。
だから、永瀬くんが動くのを待ってたのかも。
「もしもし？」
「あ！坂田さん！？今どこ！？」
息を切らしてる永瀬くんの声。少し聞き取りにくい。
「え？○○ビルの屋上だけど」
「今から行くから！」
「来るの！？なんで？」
「…安永さんに、会いたいから」
大きな息遣いとともに聞こえる、いつもより低い声に、永瀬くんの決意を感じた。
「うん」
「せやから、坂田さん、、ほんま、、申し訳ないんやけど、ほんの少しだけ、、協力してもらえへんかな？」
「…わかった」
協力が、どんな意味なのかすぐわかったから、それだけ言うと電話を切った。
「永瀬くん？来るの？」
なにも知らずに聞いてくる安永さんに、胸がちくっと痛んで、
「そうみたいですー」
それだけ答えるので精一杯だった。
２人を屋上に残して、階段の踊り場に座る。
ごめんね、安永さんの彼氏さん。
けど、会ったことも見たこともないあなたより、ずっと近くでその姿を見てきた同僚の方が大事なんだ。
どんな形であれ、前に進んで欲しいの。
可愛い可愛い弟みたいな同僚だから、さ。
ほんの少しだけ、協力してあげる。
少しだけでも、その想いが、報われますように。
祭の夜は、非日常。
いつもと違うことが起こっても……いいよね。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
