２１歳の君。１８ ページ35
花火が始まっても、頭の中はボーッとしたままだった。
浮かぶのは、さきほどテレビで見た紫耀くんの姿ばかり。
紫耀くん、、あんなに密着して、、激しいラブシーンもある映画に、、出るんだ。
…見たくない。演じてほしくない。
って、、思うのは、、ワガママすぎるよね。。
「綺麗ですねー！ここにして良かったー！」
坂田さんといたのは、雑居ビルの屋上。
穴場らしくて、誰もいない。貸切状態、、
ビルの間から、花火がくっきりと見える最高の場所。
けど、今の私には、どの花火も滲んで見えてしまう。
どうして、紫耀くん、激しいラブシーンのある映画なんて出ることになったの？
朝比奈葉子との共演だから？
もっと、芸能人で有名になりたいから…？
…何、考えてるの私。
キスシーン、、何回も見てきたじゃん。
ラブシーンだって、その延長だよ。
所詮演技なんだから。
大丈夫、大丈夫。
「大丈夫…」
「あれっ？なんか言いました？？」
「う、ううん！なんでもないよ！
坂田さん、こんないい場所よくしってたね？」
「彼氏が教えてくれたんですよー！
毎年、ここで見てて、、」
言ってから、少し寂しそうな顔してる坂田さん。
一緒に、見たかったんだ。。
「彼に電話してみたら？ビデオ通話。そしたら一緒に見てる気分になれるよ？」
私が、会えなかった３年間に良く使ってた手法。顔見て話すだけで、寂しさが紛れた。
「えっ、、でも、、せっかく安永さんと見てるし、、」
「大丈夫。気にしないで」
坂田さんは、ひまわりみたいな笑顔になって、彼に電話をかけた。
「もしもし？なに、寝てたの？
いま花火見てたんだよー！ほら！あの場所！」
スマホのカメラを花火に向けて、嬉しそうにしてる。
自分のスマホを見ると、さっき送った写真に既読がついていた。
けど、返信はない。
忙しいの、かな、、。映画の準備もあるだろうし、、。
また、花火が滲む。
あー、もう、、涙腺壊れてる。
「そーなの！バイト先の先輩ときてるんだよ！え？男なんていないに決まってるでしょ！？」
隣から聞こえる楽しそうな声。
これが、”普通”なんだ。
好きな時に電話できて、
他の女の人と、密着する姿を見ることもない。
ずっと、そんな恋してこなかった。
慣れてたはずなのに、それで幸せだったはずなのに、
なんで今はこんなに辛いの…？
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
