初対面の罠。２ ページ27
突然のことに固まって動けない。
なんで…。
朝比奈さんは唇を離すと、また微笑みを浮かべた。さっきまでは少女のように見えたのに、いまは、妖艶に獲物を誘う魔女のように見える。
「キスくらいで固まっちゃうだなんて。
これからもっと過激なことするのよ？」
「そう…ですけど…」
言葉がうまく出てこない。
演技と現実は、、別物のはず。
「私ね、役に憑依するタイプなの。
だから、ちゃんと相手役とも恋に落ちないと、演じられないのよ」
「それって、どういう、、」
「私と、恋をして欲しいの」
「恋…？」
「本気の恋よ」
言っている意味がわからない。
プライベートまで、この役に捧げろ、朝比奈さんに捧げろってこと？
「あの、、俺…」
「もちろん、役の上でね。プライベートまで捧げろなんて言わない」
その言葉を聞いて安心する。
「ただ、私はあなたに恋をするわ。
だからあなたは、せめて、私を裏切らないでね」
朝比奈さんは、穏やかな声で話してるけど、目が笑ってない。
落ち着いていた心臓が、また激しくリズムを刻む。
「…わかり…ました…」
朝比奈さんは、ニコッとすると、
「高梨さーん！もういいわよー！」
外に向かって叫んだ。
高梨さんが、部屋に入ってきても、心臓に刻まれるリズムは落ち着かない。
少しでも早く、世間に認められて、
俳優として独り立ちするために、
この映画は、大きなチャンスだと思ってた。
けれど、朝比奈さんとの出会いは、
俺の運命を大きく変えてしまう、、
そんな予感が痛いほどして、
一刻も早く、
帰って、Aを抱きしめたい衝動に駆られていた。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
