初対面の罠 ページ26
「朝比奈さんが、紫耀と会いたいって言ってる」
高梨さんに言われて、一緒に来たのは都内にある高級ホテル。
最上階のスイートルームへと案内され、ドアを開けると、朝比奈葉子がソファに座って待っていた。
これが…あの朝比奈葉子。。
幼いころからテレビや映画で見てきたままの大スターが目の前にいる。。
これまで会ってきた他の芸能人とは比べものにならないほどのオーラを纏い、俺を見て微笑んでいる朝比奈葉子に、緊張で手が震え、こめかみに汗が流れる。
「はじめまして！平野紫耀と申します！よろしくお願いします！」
声を張り上げて全力で礼をすると、
「ふふっ。可愛いわね」
手を口元に当てて笑っている朝比奈さん。
その笑顔は、もう５０代半ばを過ぎてるはずなのに、まるで少女のように無邪気だ。
「ねぇ、高梨さんって言ったかしら？ちょっと、平野くんと２人にしてもらってもいい？」
「え？」
朝比奈さんの言葉に、高梨さんは一瞬戸惑った顔をしたけれど、逆らえるわけもなく、
「失礼のないように」
とだけ小声で言って、部屋を出て行った。
部屋の端が見渡せないほど広いスイートルームに、大女優の朝比奈葉子とふたりきり…。
心臓の音が聞こえてくるんじゃないかというくらいドキドキしている。
対照的に、ソファに座ったまま、微笑みを浮かべている朝比奈さん。そりゃそっか。この人にとっては、俺なんて子供みたいなもんだよな。
「脚本は読んだ？」
「はい！」
「どうだった？」
「素晴らしかったです！ぜひ演じたいと思いました！」
「それは…私とのラブシーンも含めて？」
思わず答えに迷う。
「…それも、自分にとっての挑戦になると思ってます」
すると、朝比奈さんはニッコリ笑って立ち上がり、俺の方へ歩み寄ってきた。
「偉いわ。なんでも挑戦するのはいいことよ」
そういうと、朝比奈さんの手が伸びてきて、頬に触れた。触れられた場所が凍ってしまいそうなほどに冷たい。
「テレビで見てた通り、綺麗な顔ね」
そう言うと、シワひとつない顔を近付けてきて、
キスをされた。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
