★誰より愛しい宝物３★ ページ50
「これで…手続きは完了してるから」
妹の家のリビングで、センターテーブルを挟んだ向かいのソファに座る妹に書面を手渡すと妹は何も言わずに受け取り、隣で床に座ってお絵描きをするAを一瞥し溜息をついた。
「なんでここまでして預けたいの？」
子供が嫌いな妹。それは血の繋がった姪に対しても変わらない。
「…私には育てられないから」
「だから、その理由よ」
「……」
「うちのローン肩代わりするって言うなら、お金には困ってないんでしょ？
あとはなに？
男でもできた？」
相変わらず直球な物言いをする。他人はそれを不躾と言うのかもしれないけれど、私はこの嘘がない言い方が好きだった。
「…そんなところ。
私はもう、この子を大事に育ててあげられないから」
テーブルの上では小さな手がクレヨンを動かす毎に画用紙に黄色い花畑が広がっていく。
昨日、２人で見に行った景色だ。
「…大事にねぇ…私だって無理かもしれないわよ」
「いいの。知らない誰かに預けるよりは、血の繋がりのある人に預けたかったから」
昔から、自分が一番でないと気が済まなくて、姉である私に対してことあるごとに対抗してきた妹。
妹が、私に対してコンプレックスを抱いてるのは知ってる。嫌っていることも。成人してからは、両親の葬儀以外で顔を合わせたことはなく、お互いが結婚していたことも連絡するまで知らずにいた。
「血の繋がり…そんなのなくても子供は育つと思うけど」
鼻で一笑すると妹はまたAを見て大きな溜息をついた。
溜息をつかれるたびにこの先の未来が想像できるようで不安の種が膨らんでいく。それでも…。
「こうする他に道がないのよ…」
無意識に漏れ出た声。隠せなかった震えに妹から向けられる訝しげな目。
「それじゃ「ママ！でーきーた！みーて！」
視線から逃れるように
立ち上がろうとした私の服を
キラキラの目をしたAが掴む。
クレヨンだらけの手の下には青空のもと、手を繋いで黄色い花畑を見る私たちが描かれていた。
「…上手ね…」
なんとか絞り出した声は語尾が掠れる。
期待通りの言葉に更に目を輝かせるAに、頭の中で赤信号が点滅した。
ダメだ…これ以上一緒にいたら離れられなくなる…。
「A…」
何度名前を呼んでも足りない。
愛してるなんて言葉じゃ片付けられない。
誰より何より愛しい、私の宝物。
「……ごめんね……」
あなたを置いて…逝ってしまうママをどうか許して…
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
