変化ー高梨 ページ5
朝、マンションの駐車場へ行くと、紫耀が既に待っていた。
いつもは部屋に行ってもなかなか出てこなかったのに。
「おはようございます」
「おはよう。今朝は起きたのね」
「ははっ。ちゃんとしようと思って。色々と」
後部座席に乗り込んだ紫耀は口元に笑みを浮かべて、含みを持たせた言い方をした。目元はサングラスをしているから見えない。
「高梨さん、昨日はありがとうございました」
突然お礼を言われて、一瞬戸惑った。
私からは何も言わないでおこうと思ったのに自分から言うなんて。
「…余計なことをしてごめんなさいね」
「余計なことだなんて思ってないです。
きちんと話せて、良かったと思ってます」
「…なら良かった」
紫耀の口調からは清々しさを感じた。
彼の中で、区切りをつけられたのか…
「…高梨さん。俺、バラエティやってみたいんですけど、できますかね?」
「バラエティ?」
「小さい子が見ても楽しい番組に…出たいんです」
「…そう。新境地開拓ね。分かったわ。知り合いのプロデューサーに売り込んでみる」
「お願いします。なんでもやるんで」
「あら。すごいやる気ね」
「…だって、頑張らないと。どこかで見てるだろうから」
窓の外に顔を向けて、つぶやくように言う姿から、計り知れない切なさが伝わってくる。
『もう、高梨さんに会うこともないと思います』
昨日の彼女と同じ。
たった一度の油断と重なり合ったいくつもの偶然が、今の状況を作り出してしまった。
「一緒に頑張りましょう。紫耀」
「よろしくお願いします」
私にできることは、紫耀の夢を支えることだけ。
紫耀も、私も、そして彼女も、
やるべきこと、できることをやるしかない。
過ぎていく日々が、変えてくれることもあるから。
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愛 - 続きはまだでしょうか?急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです!更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです!更新頑張ってください!! (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2018年10月22日 8時