運命の人４ ページ8
恐る恐る開けたドアの向こうには煌びやかな世界が広がっていた。
邸宅風レストランを貸し切り行われた坂田さんの結婚パーティーは立食形式の食事を手に招待客が歓談する声で賑わっている。
着慣れないドレスを着た自分がこの空間で浮いてやしないかとソワソワしながらも、会場の前方に目を向けると、大勢の人の輪の中心に坂田さんを見つけた。
「…綺麗…」
思わず、心の声が漏れてしまった。
ウエディングドレス姿で、新郎さんの隣で笑顔を浮かべている坂田さんは、一緒に働いていた頃よりも更に綺麗になっていて、幸せなオーラに包まれてその存在が神々しくさえ感じた。
花嫁さんって…本当に特別な存在なんだな…。
「ねぇ」
坂田さんに見とれていると、突然背後から声をかけられた。
「はい？」
振り返ると、細身のスーツ姿の男の人が立っている。
「何にも飲まないの？」
その人に指摘されて、自分がまだ何も飲み物を頼んでいないことを思い出した。
「いえ、まだ頼んでなくって…」
「じゃあ頼みに行こうよ。俺もおかわりしようと思ってたところだから」
「…はい…」
流されるようにその男の人についていき飲み物をもらうと、男の人はなぜか私のそばを離れずに話しかけてきた。
「花嫁さんの知り合い？」
「はい。昔一緒に働いていて…」
「そーなんだー！俺は新郎の仕事仲間なんだ！名前、聞いてもいい？」
「安永です…」
…私…なんでこの人と話してるんだろう…。
この人はなんで私に話しかけてくるんだろう…。
坂田さんと話したいのに…。
「あのさ、今度「安永さーん！！」
男の人の声を遮るように私を呼ぶ声。
坂田さんは私を見るなり、新郎さんのことも置いてすごい勢いで駆け寄ってきてくれた。
私も男の人を放置して坂田さんに駆け寄る。
「久しぶりー！結婚おめでとう！！」
「ありがとうございます！来てもらえて本当に嬉しいです！」
「来るよー！会いたかったよー！」
「私もですよ！…安永さん、いきなり会えなくなっちゃったから…」
笑顔だった坂田さんの顔が歪んで、目が潤んだ。
「…ごめんね、仲良くしてくれてたのに、何も言わずにいなくなっちゃって…」
「…いいんです。また会えたから」
坂田さんは涙を拭うと微笑んだ。
その姿に胸が詰まる。
私は、気付かないうちに坂田さんのことも傷つけてしまっていたんだ…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 789人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
atu66mi67yu129(プロフ) - この作品が気になります。今日は更新ありますか？あればうれしいです！ (2018年10月16日 23時) (
レス) id: 055b967b0d (このIDを非表示/違反報告)
Pop(プロフ) - たくさんの更新ありがとうございます、続きが読めて本当に嬉しいです。紫耀くんと結ばれてほしいなと心で思ってしまっているけれど、ピナパルさんの描く結末を楽しみにしています。これからもずっと応援してます。 (2018年10月9日 2時) (レス) id: d54eec4cf3 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - こんばんは。更新お疲れ様です。現時点では廉くんと結ばれるとしか思えなくて、紫耀くんと結ばれて欲しいと思う私にとってはとても複雑です。引き続き更新頑張って下さい (2018年10月9日 0時) (レス) id: f598945e72 (このIDを非表示/違反報告)
ふみな(プロフ) - 面白いです！ここに来て紫耀くんの登場に廉くんとは結ばれないのかな？って今からハラハラしてます！続き頑張ってください。廉くんの一途な想いにいつもキュンキュンと温かい気持ちになってます(*´-`) (2018年10月8日 23時) (レス) id: 5163432d21 (このIDを非表示/違反報告)
krmnc174(プロフ) - 更新ありがとうございます！私は紫耀くんファンですが、この作品では連続廉くんに報われて欲しいと思ってしまいます。続き楽しみにしています。 (2018年10月8日 20時) (レス) id: 79a29a9ec1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年12月28日 23時
