運命の人18 ページ36
「うわぁー!!きれいー!!」
紫耀くんに抱っこされたももちゃんが
ベランダから眼下に広がる東京の夜景を見て感嘆の声をあげた。
「ママ!すごいねー!こんなの見たことないねー!」
「…そうだね」
嘘。…見慣れた景色。外に出れない代わりに2人でよくこの景色を見ていた。
今日だけで、私はこの子にどれだけの嘘をつくんだろう。
「ももかは、高いところ怖くない?」
「怖くなーい!きれいー!けど風がつよーい!」
ももちゃんは顔に吹き付けてくる風に渋い顔をした。
「これなら風が和らぐかな?」
紫耀くんは風上に背を向けてももちゃんを風から守るようにする。
「ちょっとは少なくなったよ!
ありがとー!」
「どういたしまして」
紫耀くんは、夜景に夢中な横顔に包み込むような眼差しを送った。
絵に描いたように幸せな父娘の姿を見ているのに、喉につかえた何かが取れない。
それはどんどん膨らみを増していくばかりで、どうにか外に漏れ出ないように下に降りるようにと息を飲み続けていた。
* * * * *
「いただきます!」
ももちゃんは両手をパチンと合わせるとお箸でロールキャベツを取り口に入れた。
「んー!おいしい!」
口をすぼめて満足そうに笑う姿に、ももちゃんと向かい合って座る紫耀くんが目を細める。
「ママのご飯はぜんぶ美味しいんだよー!おいしいでしょー?」
「…美味しいね」
「紫耀くん初めて食べた?」
「うん」
紫耀くんもまた、ももちゃんに嘘をつく。
偽りの身分を演じられる時間を少しでも伸ばすための嘘。
偽り続けても、終わりはない。
終わらせないと、次に進めないのに。
終わらないで欲しいと、思っていたんだ。
はっきりとした終わりを見たくなかったんだ。
そこにあった雲が霞んで空に溶けていくようにいつの間にか次に道へ進んでいて欲しかった。
でも、私たちはまた出逢ってしまった。
偶然に偶然が重なった奇跡の再会。
ううん。それはもう偶然じゃない。
神様が私に突きつけた運命だったの。
逃げるな。
選べ、と。
何もかもが運命だったと思えば納得がいく。
…私が廉くんを選ぶことも。
また膨らんだ喉元の塊を、今度は水ごと流し込んだ。
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atu66mi67yu129(プロフ) - この作品が気になります。今日は更新ありますか?あればうれしいです! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 055b967b0d (このIDを非表示/違反報告)
Pop(プロフ) - たくさんの更新ありがとうございます、続きが読めて本当に嬉しいです。紫耀くんと結ばれてほしいなと心で思ってしまっているけれど、ピナパルさんの描く結末を楽しみにしています。これからもずっと応援してます。 (2018年10月9日 2時) (レス) id: d54eec4cf3 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - こんばんは。更新お疲れ様です。現時点では廉くんと結ばれるとしか思えなくて、紫耀くんと結ばれて欲しいと思う私にとってはとても複雑です。引き続き更新頑張って下さい (2018年10月9日 0時) (レス) id: f598945e72 (このIDを非表示/違反報告)
ふみな(プロフ) - 面白いです!ここに来て紫耀くんの登場に廉くんとは結ばれないのかな?って今からハラハラしてます!続き頑張ってください。廉くんの一途な想いにいつもキュンキュンと温かい気持ちになってます(*´-`) (2018年10月8日 23時) (レス) id: 5163432d21 (このIDを非表示/違反報告)
krmnc174(プロフ) - 更新ありがとうございます!私は紫耀くんファンですが、この作品では連続廉くんに報われて欲しいと思ってしまいます。続き楽しみにしています。 (2018年10月8日 20時) (レス) id: 79a29a9ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2017年12月28日 23時