運命の人13 ページ29
5年前と変わらない高梨さんの柔らかい笑顔とは対称的に、私の心臓の鼓動は早くなっていく。
どうしてここに高梨さんが…?
紫耀くんに頼まれたの?一体何を?
「ごめんなさいね。家を訪ねても良かったんだけど、あなたがひとりになるタイミングがここしかなくて…」
「いえ…紫耀くんから聞いたんですか…?」
「えぇ…いろいろと…」
気が遠くなりそうになる。高梨さんにももちゃんのことを知られてしまったんだ。
「ママ?だーれ?」
手を引かれて我に返ると、ももちゃんが不思議そうな顔で私を見上げていた。
すると高梨さんはももちゃんの前にしゃがんだ。
「はじめまして。おばさんね、ももちゃんのママの知り合いなんだ」
「ふーん。おはようございまーす」
「おはようございます。おりこうさんね」
高梨さんはももちゃんの頭をそっと撫でると目を細めた。
「ママ、保育園は?」
「あ、うん。行かなきゃね!…すみません…」
「ごめんなさいね。ここで待ってるわ」
会釈をすると保育園への道を急いだ。
送るフリをして逃げてしまいたかった。
そのまま保育園も転園して引っ越しもして…。
…それで、どこまで逃げるんだろう。
逃げ続けてなんになるんだろうか。
*
ももちゃんを送り届けると先程の場所に戻った。
「お待たせしてすみません」
「大丈夫よ。勝手に押しかけたのはこちらなんだもの。気にしないで。
……紫耀に、そっくりね」
高梨さんが保育園の方を見ながら呟いた。
「はい…」
「子供ができたから、いなくなったのね」
「…はい…すみませんでした」
胸がきゅうっと締め付けられる。
「謝ることじゃないわ。
あなたは紫耀を守ろうとしたんでしょう?」
返事ができず地面に目を落とした。
守ろうとしたつもりだった…だけど、紫耀くんを孤独にしてしまった。。
「今日はあなたに…お願いがあって来たの」
遠慮がちな声。
「紫耀が、倒れてしまって…」
「え…!?」
高梨さんの一言に血の気が引く。
倒れた?
「えぇ…しばらく入院したんだけど、昨日退院して、今は家で寝てるわ。けど、元気がなくてね…あなたたちに会えば元気になるかもしれないと思って」
「そんな…余計に悪化させるだけですよ…」
私を抑えつけ睨む顔が頭に浮かび、唇を噛み締めた。
私は紫耀くんに会えない。会わない。だって…
「それに…私…もうすぐ結婚するんです」
高梨さんの目が大きく見開かれた。
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atu66mi67yu129(プロフ) - この作品が気になります。今日は更新ありますか?あればうれしいです! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 055b967b0d (このIDを非表示/違反報告)
Pop(プロフ) - たくさんの更新ありがとうございます、続きが読めて本当に嬉しいです。紫耀くんと結ばれてほしいなと心で思ってしまっているけれど、ピナパルさんの描く結末を楽しみにしています。これからもずっと応援してます。 (2018年10月9日 2時) (レス) id: d54eec4cf3 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - こんばんは。更新お疲れ様です。現時点では廉くんと結ばれるとしか思えなくて、紫耀くんと結ばれて欲しいと思う私にとってはとても複雑です。引き続き更新頑張って下さい (2018年10月9日 0時) (レス) id: f598945e72 (このIDを非表示/違反報告)
ふみな(プロフ) - 面白いです!ここに来て紫耀くんの登場に廉くんとは結ばれないのかな?って今からハラハラしてます!続き頑張ってください。廉くんの一途な想いにいつもキュンキュンと温かい気持ちになってます(*´-`) (2018年10月8日 23時) (レス) id: 5163432d21 (このIDを非表示/違反報告)
krmnc174(プロフ) - 更新ありがとうございます!私は紫耀くんファンですが、この作品では連続廉くんに報われて欲しいと思ってしまいます。続き楽しみにしています。 (2018年10月8日 20時) (レス) id: 79a29a9ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2017年12月28日 23時