後輩。１ ページ38
安永を初めて見たのは、新入社員紹介のときだった。
「今日からお世話になります。安永Aです。よろしくお願いします」
なんだ、この可愛い子。
肌は白いし、目はパッチリしてて、唇ぷっくりで、鼻筋通ってて、
髪も染めてなくて、化粧も薄くしている程度で地味なのに、なんでこんな可愛いんだ？
安永を初めて見たときの感想。
それから、安永の教育係になって、仕事を教えていくうちに、顔の可愛さだけじゃなくて、
一生懸命仕事を覚えようとするところや、自分の休憩中でも他の仕事を手伝うところ、理不尽なことがあっても文句１つ言わず、笑顔で仕事をしているところ、
安永のなにもかもに惹かれていった。
「岸先輩、これってこのままでいいんでしょうか？」
検査した部品を見せてくる安永。俺より少し背が低いから、俺を見ると自然と上目遣いになるんだけど、その視線が可愛すぎてつらい。
安永の教育係になれてよかった。
けど、俺と同じ気持ちでいる奴は多いみたいで、、
「安永さん可愛いよなー！」
「なー！性格も素直だし」
「彼氏とかいるのかな？」
「聞いた奴いるけど、返事濁してたらしーよ？」
「微妙な関係ってこと？んじゃあ俺、遊びに誘ってみよーかな！」
ライバルは多かった。
けれど、安永は、遊びの誘いには乗らなくて、大勢の食事会や飲み会には来てたけど、男と二人で行くことはなかった。
やっぱ彼氏いんのかな？
気になるけど、聞けなかった。
入社してから、俺に心を開いてくれたのか、態度が柔軟になっていった安永。
１年が過ぎた頃には、飲み会でも隣に座ってずっと話し込む仲になっていた。
「岸先輩、話しやすいです」
笑顔でそう言ってくれる安永は、俺の中ではとっくに特別な存在になっていて、安永の話だからなんでも聞くんだよ、ってずっと言いたかった。
けど、それを言ってしまったら、安永はきっと困る気がしたから、言えなかった。
安永にとって、俺は会社の先輩でしかない気がしたから。
それでもいいんだ。
他の男より、少しでも近くにいられれば、それで。
ある日、会社に行ったら、安永が同僚の女子たちに花束を貰っていた。
え！？まさか寿退社！？と思って聞いてみたら、
「Aちゃん、今日で２０歳になったんですよー！」
誕生日だったので安心した。
「おめでとう。酒解禁じゃん」
「はい！飲みます！」
満面の笑みを見せてくれる安永を見て、
一歩前へ踏み出してみようと思った。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
