１８歳の君。１０ ページ36
「悪いとは思ってないよ。だって、岸先輩は、ただの会社の上司で、飲み仲間だから。けど、嫌な思いをさせたと思ったから謝ったんだよ」
「なにそれ」
「紫耀くん…。私、この３年間、ずっと寂しかった。」
そう言うと、紫耀くんは目を見開いて私を見た。
「簡単に会えないのは分かってる。声が聞けるだけでも、すごい幸せだった。けど、テレビの中の紫耀くんは、、他の人と手繋いだり、キスしたりして、、そのたびに、苦しくて、辛かった、、。
それが仕事で、紫耀くんの選んだ道なんだから、応援しないといけないのは分かってる。けど、できないときもあって、、。
そういう気持ちがぐちゃぐちゃなときに、先輩と飲みに行って、他愛ない話してると、それだけで、気持ちが楽になったの」
思わず、思っていたことを全部話してしまった。言うつもりなかったのに。
紫耀くんはうつむいてなにも言わない。
「ごめんね。情けないよね。紫耀くんのこと待ってるって自分で決めたのに…」
気付いたら、涙が頬を伝っていた。すぐに拭く。
泣くなんて、、私、ずるい。
「けど、先輩とは、本当になにもないよ。人として尊敬はしてるけど、、私…」
そこまでいったところで、紫耀くんはガバッと立ち上がった。
「紫耀くん…？」
「俺、実家行くわ」
「え？」
そう言うと、持ってきた荷物も置いて、そのまま部屋を出て行ってしまった。
ひとりの部屋でペタリと座り込む。
３年ぶりの再会だったのに…せっかくいちばんに会いに来てくれたのに…。最悪だ…。
言わなくてもいいことまでいってしまった…。
紫耀くんの、甘い匂いが残る部屋で、後悔と自己嫌悪に襲われて、朝まで泣き続けた。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
