１８歳の君。１ ページ24
蝉の声が響く、夏。
「安永さーん！この荷物運んでくれるー？」
「はい！」
私は２０歳になった。
高校を出てから、進学せず、地元から少し離れた市にある、部品工場に就職し、ひとり暮らしをしている。
経済的に楽ではないけれど、あの安永の家にいるよりも精神的にはよっぽど楽。
ずっと持たせてもらえなかったスマホも自分で買って持てるようになったし。
「ちょい重いな…」
「手伝うよ」
隣から来てヒョイと荷物を持ってくれる優しい先輩もいるし。
「ありがとうございます、岸先輩」
「女の子には優しくしろって、親に言われてきたからなー」
子犬みたいな顔をしている岸優太先輩。
私の一個上で、新入社員のときに教育係をしてくれて、それからずっと気にかけてもらっている。
「あ、そだ。今日給料日じゃん。行かね？」
グラスを飲む動作をする先輩。もちろん。。
「はい！いきます！」
２０歳になり、お酒を飲めるようになってからは、たまに飲みに行くようになった。
高いお店では飲めないから、安い大衆的なお店で飲むのだけど、それが楽しい。
ソルティドッグを一気に飲み干し、叩ききゅうりを食べると、至福を感じる。
夏の暑さでカラカラになった喉を潤すのに、ソルティドッグは最適だと、私基準で思う。
「おいしー…」
「心から言ってる顔だなぁ」
「もー最高に幸せです。私にはこれで充分。高いお酒もオシャレな料理もいりませーん！」
「ははっ」
私を見ながら、顔をクシャッとして笑ってる岸先輩。いつもそう。誘ってくる割には、話してるのは私ばかりで、先輩は、私のことを眺めてニコニコしてるだけ。
「先輩、楽しいですか？」
聞いてみたくなったので聞いてみると、先輩は驚いた顔をして、
「楽しいよ？だから誘うんじゃん」
といってきた。
「けど、いつも話してるの私ばっかりですよね？先輩はなんか話したいこととかないんですか？」
「俺ー？俺、日本語あんまり得意じゃねえからなぁ…。安永の話聞いてるのが楽しいんだよ」
先輩、頭掻いてる。困った時のクセだ。
「ならいいんですけど。じゃあ！課長の話聞いてもらえます？」
「おう！いいよいいよー！」
いつも話を聞いてくれる岸先輩。愚痴も聞き流さずにいてくれる。
私が仕事楽しくできてるのは、先輩の存在が大きいな。。
「俺は君が好きだよ」
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
