初恋のひと。 ページ19
初めて君に出会った日のことを鮮明に覚えてる。
黄色い通学帽子をかぶって、赤いランドセルを背負った君は、新品のランドセルを背負って、集合場所まで来た俺を見て、
『入学おめでとーーー！今日から一緒に登校する、安永Aだよ！よろしくね！』
とびきりの笑顔で言ってくれた。
その笑顔を見て、すべての不安が吹き飛んだんだ。
『ちょっと！紫耀くん！一緒に帰らないといけないんだよ！』
『だーってこっちから帰りたいんだもーん！』
いつもの帰り道に飽きて、毎日のように通学路を外れて走っていく俺を、他の上級生が放っておく中で、君はいつまでも追いかけてきてくれた。
『あ！こんな道あったんだ！』
いつの間にか、一緒に探検を楽しんでいる君。
『へー！紫耀くんに教えてもらわなかったら気づかなかったよー！ありがと！』
迷惑をかけてられてるはずなのに、お礼を言ってくる君。
『さっ、遅くなるから帰ろっか』
優しく諭してくれる君。
君とふたりで帰りたいから、寄り道してるんだよ。
思えば物心着いたときから、目立つことが好きだった。
発表会では、主役をやりたがったし、運動会でも、活躍して注目を浴びることに快感を覚えていた。
『紫耀は、目立ちたがり屋で顔も良いから、将来は芸能人になれるかもね！』
いつも周りから言われていた言葉。
気がついたら、叶えたい夢になっていた。
芸能人になって、たくさんの映画やドラマに出て、誰よりも有名になりたい。
それが、俺の夢。
そう自覚したなら、どうしても、夢を応援して欲しい人がいた。
けれど、言おうかどうか迷っていた。
親も友達も、本気で受け取ってはくれなかった。
君は…俺の夢を知ったらどう思うだろう。
迷い続けて、あっという間に、君と帰れる最後の日になってしまった。
いつものT字路で別れて少し歩いたところで、足が止まる。
やっぱり、言いたい。
『A！！』
驚いて振り返る君。
『俺な！絶対芸能人になる！』
突然の宣言にキョトンとしている君。
『絶対なるから見てて！』
君は、親や友達のように、俺の夢を聞いて笑ったりしなかった。
初めて出会ったときと同じ、とびきりの笑顔で
『うん』
と言ってくれた。
君が見ていてくれるなら、俺はどこまでも頑張れる。
俺の行くところに、いつまでもどこまでもついてきてくれる、大好きな君に見ていてもらえるのだから。
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2017年4月18日 23時
