ＦｉｒｓｔＬｏｖｅ３*･゜ﾟ･*:.｡..｡.:*･ (ページ30)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:318,043 hit

２１歳の君。４１ページ30

「嫌だ……」

まるで子供みたいに、首をブンブン振る紫耀くん。

「紫耀くん…」

「嫌だよ！なんで…引っ越すなんて…！！」

「…高梨さんと話したの。朝比奈さんのこと、聞いた。
同じマンションにいたら、別れたって言っても信じてもらえないだろうから、、引っ越そうと思ったの。
大丈夫だよ。別れるわけじゃない。映画が公開されるまで、ほんのすこし、会えなくなるだけだから…」

紫耀くんは呆然としてうつむくと、力が抜けたようにソファに座り込んだ。

隣に座って、手をそっと握る。

冷たい手…。まるで紫耀くんの心の中を表してるみたい。

「私の気持ちは変わらないよ？

紫耀くんが、芸能界で認められて、迎えに来てくれるまで、何年でも待つから、、だいじょう…！！」

突然、手首を掴まれたかと思うと、ソファに押し倒された。

そのまま、首筋に触れていく紫耀くんの唇。。

……大事な話をしてるのに、何するの…。

「ダメ…！やめて……！話…聞いて…紫耀くん！！」

必死でもがいて抵抗するうちに、床に転げおちてしまった。

床で紫耀くんに抱きしめられる形になる。

耳元で聞こえる、小さな息遣い。

「お願いだから…話聞いて…？」

こらえていた涙が、溢れてきていた。

「A…」

紫耀くんが私に馬乗りになったまま、体を起こすと、

頬に、温かい液体が落ちてきた。

それは、初めて見た、紫耀くんの涙。

「…ごめん…！！」

紫耀くんが小さく叫んだと同時にまた涙が落ちた。

手を伸ばして、紫耀くんの目から溢れる涙を拭くと、その手を優しく床に押し付けられる。

紫耀くんは、涙を拭うこともせず、キスを落としてきた。

しょっぱい味のキス。

服がたくし上げられて、冷たい手が身体に触れていく。

もう、話すことができなかった。

泣きながら、何度も何度も、

「ごめん…俺のせいで…！」

振り絞るように言う紫耀くんを、拒むことなんてできなかった。

私が想像していたよりもはるかに、紫耀くんは傷ついてたんだ。。

普通の男の子が、経験するような青春をすべて犠牲にして、ただ、夢のために努力してきた紫耀くん。

たったひとつ望んだ普通のことが、踏みにじられてしまった失望、悲しみ、苦しみ………

何もわからず、

ひとりで勝手に納得していた自分が許せない。

せめて、今だけは、

紫耀くんのなにもかもを受け止めてあげたかった。