透明造花 [Koki.K] (ページ42)

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片目を失くした単眼のぬいぐるみが問い掛ける。

きっと恨んでいるのだ。
あの日この子を置いて逃げたことを許してくれない、だから私は今もこうして暗黒の中にいる。

その証拠に、何処が虹彩かも分からないこの子の瞳と一向に視線が合わない。

「キミは今幸せ？」

問い掛けている。
あの日の私が今の私に問い掛けている。

左手には2つの水晶体をきちんと揃えたぬいぐるみ。

冷たいアスファルトに座り込み、膝におでこを押し当てる私を幼い私が見下ろしている。耳を塞ぐ私に容赦なく降り注ぐは土砂降りの雨音と私の声。

「ねえ、キミは幸せなの？」

うるさい。

小さい身体を蹴飛ばしてしまいたい。

そうすれば傷つくのは私だと、今の私ならとっくに知っている。それでもいい、私諸共殺してしまえばいい。

ふと声が止んで顔を上げる。前髪からぽたりと水滴が零れて、視界が滲んだ。

幼子の光ない真っ黒な玉が私を見ていた。

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