透明造花 [Koki.K] (ページ38)

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頬を赤らめながら俺に「好き」だと告白した女を見ても、俺は何も感じなかった。

可愛いとでも思ってやってるのか？その表情。

フラれるなんて想像もしていないのか、緊張の下に見え隠れしている勝利を確信した顔が鼻につく。

「ごめんね、好きな子いるから」

俺が欲しいのは、お前じゃない。

去る5月、春雷が過ぎたかと思えばまた直ぐに梅雨が始まる。俺の一番好きな季節がこの街を包もうとしていた。

新しく担任になる男がカッカッと小気味よくチョークを鳴らす。黒板に書き出された自分の名前を見て、俺はそのままをなぞって声に出した。

「黒田光輝です。よろしく」

鈍い拍手とラジオノイズのようなざわめきが教室でハウリングした。どんなリアクションをされているのか、雑音の中から一つ音声を拾い上げようとしてみても、上手くチューニングが合わなくて聞き取れない。

椅子に座ったまま目線だけで俺を追う新しいクラスメイト達の表情を見る限り、期待3割、興味3割、好奇心4割と言ったところか。

女の反応だけは毎度の如く好感触だった。

予め用意されていた席につき、改めて周囲を見渡す。6×6、綺麗に配列された席の中に俺の探していた人がいない。

このクラスにいると聞いていたのに。もしかして休みだろうか、目の前にあるポツリと住人を探していた席を見つめる。

よく目を凝らして見ると引き出しからはみ出たファイルの端に、『2-6 AA』と丁寧に名前が書かれていた。

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