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『今日元気なかったみたいだけど大丈夫？』
「ごめんね、大丈夫」
『それならいいけど…。何かあったら直ぐに俺に言ってね？』
「…うん、ありがとう」
電話越し、光輝にはこの気持ちを悟られないようになるべく明るく振る舞う。
「そう言えばまだ明日の課題やってなかった！今からやらなきゃ」
『そんなの俺の写せばいいじゃん』
「ダメだよ、あの先生ちゃんと一人一人の回答チェックしてるもん」
『そっか。じゃあ、切る…？』
「うん、ごめんね。」
光輝の少し寂しそうな声に申し訳なさを感じつつ、無理矢理焦ったフリをして謝る。
課題なんてもうとっくに授業中に終わっている。
正直、電話を切るための口実でしかなかったけれど。
顔が見えていないからこの嘘を光輝に見透かされることもない。
『あ、ちょっと待って』
「ん？」
『俺のこと、好き？』
こうして
光輝はいつも通話を切る前に聞いてくる。
呪文のように、私に繰り返し。
繰り返し好きだと伝えることで本当に好きになれたら楽なのに。
パブロフの犬みたいに、私の脳みそももっと単純なら良かった。好きと口に出すことで本当に好きになれるような簡単な造りなら、こんなに苦しい気持ちになることもないのに。
「ごめんね」
「すきだよ」
この言葉を私は皇輝に伝えたいのか光輝に伝えたいのか
自分でもよく分からない。
「…好きだよ」
私がそう答えると、安心したように『俺も』と返事をするから
光輝に偽物のおやすみを告げて私から電話を切った。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2020年10月23日 12時
