透明造花 [Koki.K] (ページ35)

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「キミのことは知ってるよ。Aの元彼、でしょ？」

光輝の言葉に皇輝の眉が1ミリ上がったのが視線の端っこに見えた。

イラッとした時の彼のクセだ。
怖くて目はやっぱり合わせられない。

「俺は別れたなんて思ってないけどね」

ふって、鼻で笑ったような声が聞こえて
光輝が私の腕を握る力をギュッと強めた。

皇輝のその言葉の真意が私には分からない。

「悪いけどAはもう俺のだから」
「Aはモノじゃないよ」

焦りと苛立ちを含んだ二人の声が私の頭上で交差する。当事者なのに居心地が悪過ぎて動けない。今すぐここから逃げ出したい。

「まあ今更何言ったところで、Aはもうキミのこと好きじゃないけどね」

光輝の言葉に心臓が掴まれたように痛くなった。最悪だ。

確かに、そうだけど。そうじゃなきゃいけないんだけど。

その台詞だけは皇輝に聞こえて欲しくない。

まだ皇輝への想いを捨てきれない優柔不断、私の弱さが招いた自体が今、私の首を締めている。

光輝の言葉に反論する資格が私にはないから黙ったまま俯くことしか出来ない。

だって私は、あの時皇輝よりも光輝を選んだ。光輝からの告白に縋ってしまったのだから。

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