透明造花 [Koki.K] (ページ33)

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不思議な気分だ。

ずっと見上げていた星空が全部私のモノになって、その中から気に入った1つを選びとったみたい。

自分とは縁遠いと思っていたモノがいきなりすっぽりと自分の掌に収まってしまったことに、私は喜びよりも戸惑いを感じていた。

なんか、違和感。

「A、今日映画見て帰ろーぜ」
「ごめん、今日は…」
「湧ごめん、A今日は俺と先約あるんだよね」
「…おう」

拭いきれない違和感は魚の小骨みたいに私の喉に引っかかったまま取れないけれど、それをわざわざ吐き出す程のことでもないから、結局誰にも言い出せずにいた。

光輝の圧に気圧されて作った笑いで去っていく元木の背中を見送って席に着く。

私の選択は果たして正しかったのだろうか。

「A」
「ん？」
「楽しみだね、映画」
「あ、うん。そうだね」

じわりじわり
心を侵食していく、何か。

前の席に座る光輝の背中を見ても、彼が何を考えているのかサッパリ分からなかった。

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