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多分、眠っていた。
寝返りを打つ瞬間に目覚めてゆっくり目蓋を開くと、辺りはもう真っ暗だった。
遠くから聞こえる弟の声と柔らかいマットレスの感触から、自分が部屋のベッドの上にいることを理解する。自分で布団を抜け出したさっきのことは全て夢だったのかもしれない。
とっさに頬に手をやっても、もう濡れてはいなかった。
「あ、姉ちゃん起きた」
暗い廊下の壁を手探りで辿っていくと明かりが洩れている扉に辿り着いた。自分の家なのに異世界に来たみたいな違和感は、私自身がまだ夢の中にいるからかもしれない。
扉を開くとお母さんと尚大がテレビのバラエティを見ながら食事をしていて、部屋に聞こえてきた笑い声は弟のものではなくテレビの画面越しのものだったのだと気づいた。
「よく眠ってたのね。ご飯、食べれそう？」
「いらない」
胃には何も入っていないはずなのにムカムカと湧き上がってきそうだった。
何か冷たいものが欲しい。咀嚼のいらない、冷たいたべもの。
「そう言えば冷蔵庫にゼリーと果物入ってるわよ。尚大が買ってきたの？」
「俺じゃない」
「あら、じゃあAあんた自分で買いに行ったの？」
お母さんに名前を呼ばれ、意味も理解しないまま頷いた。返事をするのも億劫で、水やら薬やらを纏めて部屋まで持ってきてもらうように伝えた。
お母さんが私の部屋ほサイドテーブルに置いてくれたトレーには、見覚えのあるゼリーが載っていた。小さい頃から風邪を引くと必ず誰かに頼んで要求しているみかんゼリーだった。
冷たくてつるんとした食感が気持ち良くて全部食べた。
薬を飲んでまたすぐに布団に潜った。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2020年10月23日 12時
