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外が暗くなってきて、風の音もさっきより酷くなっていた。
迎えに来てくれる人がいないことは分かりきっていたし、変な期待を抱く前に帰ろうと思った。でもやっぱりもうちょっと、外の寒さを言い訳にしてダラダラとその場に居座り続けた。
「ひっ」
3回目、今度は本当に帰ろうと立ち上がろうとした時だった。
辛うじて明るかった遊具が闇に沈んだ。入口を誰かが覗き込んでいる。
思わず情けない声が出た。だってめちゃくちゃ怖い。
要塞は最高の隠れ場所だけど、見つかってしまったらそれ以上逃げるのか難しいことに気づいた。
「キミ、誰」
少し掠れた声だった。怖いのに何故かその声を聞くと安心してしまった。
それどころか泣きなくなる程優しくて、心がぐちゃぐちゃに掻き乱されるように激しい声だった。
「泣いてるの？」
私は声のする方に導かれるように進んだ。怖い人かもしれない。懸念はあったけどそれ以上に好奇心の方が勝った。
「濡れてる」
この場所に闇をもたらしたのは凄く綺麗な顔をした少年だった。見たところ同い年くらいで、見たことのない制服を着ていた。
顔立ちは大人びているのに細い身体はまだ成長途中で、優しいのに情動を掻き立てるような声。
何もかもがアンバランスでそれが逃れられない程魅力的だった。
人間ではなくて、それよりもっと高貴な別の生き物を見ているようだった。天使とか、そんな感じ。
「あげるよ」
天使は私に微笑んだ。びしょ濡れの私に傘を手渡し、反対に雨の中に飛び込んだ。
溶けてしまうんじゃないかって心配になるくらい彼はふわふわと掴みどころがなかった。雨粒さえも味方につけたみたいに、笑う。
「ありがとう。私、A。貴方は、誰」
最初聞かれたみたいに私もそうした。なんでもいいから彼のことが知りたい、その声をもっと聞きたい。
「俺？俺は…
『コウキ』」
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作者名：ベルカ | 作成日時：2020年10月23日 12時
