透明造花 [Koki.K] (ページ11)

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憂鬱な気分で5限目の授業を受けていたら案の定ぽつぽつと水滴が落ちてきた。

最悪だ。

家に着くまではギリギリ持ち堪えてくれると思ったのに。

机の横にかけたぺたんこの鞄を漁った。いくら掻き回しても、何の感触も感じられない。

慌てて鞄をひったくり中身を確認しても、いつもそこにあるはずの折り畳み傘がなかった。

そう言えば一昨日、昇降口から濃いグレーの上空を見上げ、雨の中に飛び込もうとしていた名前も知らない男の子に貸したんだった。些細なことだからすっかり忘れていた。

HRが終わっても雨は降り止んでいなかった。それどころかさっきより益々激しさを増していた。

家の帰り方向が一緒なのは皇輝しかいない。

他の友達は駅までは一緒でも、結局路線が違うから駅から家までの道のりで濡れ鼠になることは目に見えている。

仕方なく私は、一昨日見たあの子のように昇降口から空を見上げ、飛び出そうとした。

アスファルトを蹴ったその瞬間、片腕を誰かに引っ張られ思わずよろめいた。
そのまま、私は私を引き留めた誰かの方向へと倒れ込む。

見上げると懐かしい、本当に懐かしい顔があった。驚いた。

その瞬間の私の顔はきっと驚きで目をまん丸にして、泣きそうで、相当おかしかったに違いない。

私の腕を掴んだのは、皇輝だった。

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