ハーツラビュルの寮のアリス２ (ページ5)

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『どこに行っちゃんたんだろう。』

あの後、急いでバラの迷路に来たが、ウサギの姿が見当たらない。

気がついたら奥の方に来てしまい、自分がどこにいるのか分からなくなってしまった。

『もうすぐ、日が暮れちゃう。門限があるのに！
遅刻するのは私の方だよ、、、』

どうしよう、寮長にバレたら怒られる！

すると、後ろからガサガサという音が聞こえた。

思わず振り向くと、白ウサギがこっちに向かってきた。

『ああ！よかった！怪我はない？』

白ウサギを抱っこし、体を見渡すが怪我はなさそう。

『もう、どこに行ってたの？』

白ウサギは私の腕から飛び出し、ついてこいと言ってるみたいに私を誘った。

白ウサギが連れてきたのは、迷路の先にあるテラスだった。

こんなところがあるんだ。

白ウサギについていくと、そこには寮長の姿があった。

リドル「おや？君がAを連れてきたのかい？」

白ウサギは寮長に頭を撫でられ、気持ち良さそうな顔をした。

『寮長、すみません。急に飛び出して行って。』

リドル「構わないよ。
ここは僕のお気に入りの場所なんだ。」

『静かで、綺麗なところですね。』

寮長は優しく笑い「こっちへおいで」と向かいの席に案内してくれた。

リドル「そういえば、君に聞きたいことがあったんだ。」

『なんでしょう？』

リドル「以前、君はあの狂った連中の”アリス”が好きと言ったね。
何故なんだい？ハーツラビュルに選ばれし物は厳格な精神を持っているはず。

理由を聞かせてくれ。」

ああ、あの時の。

『・・・私が、元いた世界で「不思議の国アリス」は有名な物語で、子供に親しまれる童話です。

私も、小さい頃に母が本を買ってくれて読んだのがきっかけで知りました。

おかしな人たちに振り回されるアリス。
今までに読んだことの無いような物語で擦り切れるまで読みました。

でも、それだけが好きな理由じゃ無いんです。

その本は母がくれた唯一のプレゼントでした。』

リドル「・・唯一の・・プレゼント？」

寮長は眉間にシワを寄せて、ん？という表情をした。

『母は会社を経営しています。
父と離婚して、シングルマザーで私を育ててくれたのですが、仕事が忙しいのが理由で、年に数回しか合わないんです。

しかも、ほんの数分だけ。

家に帰ってくるのは、私が寝た後で
出ていくのは私が起きる前。

毎日、テーブルに夕食代が置かれていました。』