詩人と魔術師【チョリス】 (ページ2)

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「……お待たせ」

　前にコーヒーの瓶に嘔吐していたのを思い出して、浴室にあったプラスチック製の桶を彼女の側においてやった。

　フランツが飲んだのは僕の知る限りでは久々のはず。大方それで飲みすぎてしまい、倒れてしまったのだろう。

　氷嚢を彼女の額へ乗せる。そして、自分の掛け布団を被せるとどこだか彼女の表情は柔かくなった気がした。

　昔から整っていたフランツの顔は、女性となった今でも変わることを知らないようだ。昔の面影を思い出さずにいられない彼女の姿に、惚れ直してしまうような、思わずにやけてしまうような、そして腹が立ってしまうようなーーー。

「……ねぇフランツ、君は……僕のこと、どう思ってるの」

　彼女がーーー否、彼が過去のことを忘れるなんてことはあるのだろうか。

　僕らが決別したことは、忘れていないはずーーー。

　音楽性の違いはあったが、結局は音楽ではないことで僕たちはーーー。

「大好きよ、フレデリック」

　寝言なのか違うのか、けれども彼女は確かにそう言った。

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