第15話 ページ18
◇
翌日の昼休み、私は少し調べたい事があって資料室へと向かっていた。
窓の外をぼーっと眺めながら廊下を歩いていると、少し前方に諸伏がいることに気付いた。
｢やほ、諸伏｣
｢…！か、加賀利……どうしたの？こんなところで｣
一瞬、彼の表情が物凄く怖く感じたのは気のせいだろうか。
私が駆け寄って声を掛けると、少し慌てた様子だったがすぐ元の諸伏に戻っていた。
｢ちょっと調べ物。諸伏も？｣
｢う、うん。そんなとこ｣
やっぱり少し様子が変に感じたが、なんだか聞いてはいけないような気がして、私は何も気付いていないふりをした。
私の様子に安心したのか、彼は穏やかな笑顔で、昨日は……と口を開く。
｢あれから大丈夫だった？松田とちゃんと仲直りした？｣
｢あ、ハイ……大変お騒がせシマシタ…｣
｢ふふっ、オレは大丈夫だよ｣
厳密に言えば私と陣平が喧嘩した訳ではないので少し違う気がしたが、まあ大体は合っているのでそこは訂正しなかった。
あの後ちゃんと陣平に、悪かったよ……と小さな声だが珍しく素直に謝られたものだから、一応仲直り的なのはしたのだ。
眉が下がってカタコトになる私を見て、諸伏は口元に手をやって笑う。
以前も思ったが、その様子はすごく上品に見えて、私は思わず彼に尋ねた。
｢……諸伏って絶対育ち良いよね｣
｢えっ、急にどうしたの…？｣
｢いやぁ……仕草とかがいつも綺麗だからさ｣
そうかな？と困った表情だが少し嬉しそうな諸伏が可愛らしく見えて、ほっこりする。
きっと親御さんの育て方が良かったんだろうなぁ、と思って私は思ったことをそのまま彼に告げる。
｢うん…すごく良い両親だったよ……｣
そう言う諸伏の表情はまた曇っていて。
この時私が彼の事情を知っていたなら、絶対にこんな話題を振ることなんてなかっただろう。
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作者名：りもねん | 作成日時：2022年5月28日 14時
