肆拾捌話 曇り空 ページ49
四方八方の木が枝や幹で襲ってくる。それらは鬼によって自在に伸び縮みするから、避けるのが更に難しい。
「逃げてばかりじゃ倒せないわよ？」
凄い速さで蔦が私に向かって伸びてきて、咄嗟にしゃがんで避ける。あれは攻撃目的じゃない、多分蔦で捕まえられるんだ。
頭で考えるより先に身体が動く。どんな些細な気配も捉えられるように集中して、攻撃や蔦を避けてゆく。
「今迄会った鬼狩りの中で１番速い。良かったわぁ、早めに会えて」
下弦の肆は余裕の表情でニコリと笑った。
「今の内に殺しておかないとね。柱になられたら大変だわ」
いよいよ本気を出してきたのか、攻撃が速くなってきた。避け切れないものも増えてきて、仕方ないかと柄を握る手に力を込める。
避けながら懐に潜り込めればと思って手は自由にしておいたけれど、仕方ない。
「空の呼吸 弐ノ型」
思い浮かべるのは曇天の空。灰色の、雲に覆われた空。
「
それは、周りを斬り付ける防御向きの技。
私に迫っていた枝や幹や蔦が一瞬で細切れになり、その動きを止めた。
私が実弥お兄ちゃんに褒められた事が１つある。私は手首が柔らかく、それ故に刀を振れる速さが速いらしい。
つまり、一瞬で何十回もの斬撃を放つ事が出来る。
私がすっかり枝や幹や蔦を斬ってしまった事に、下弦の肆は驚いたようだった。それでも普通の鬼と違うのは、そのままで居ない事。
すぐさま新しい枝を使って攻撃してくる。
もう油断しないという気持ちの表れなのか、速さも量も段違いだった。
刀で捌いたり避けたりするけれど、頸を斬れなきゃ意味が無い。そして、今の手一杯な私にそんな事は出来ない。
段々腕が疲れてくる。身体の動きが遅くなるのが自分で分かる。
「いっ」
枝が掠って、そんな声を洩らす。そしてその隙を、十二鬼月が見逃す筈が無かった。
蔦が何本も伸びてきて、私は両手両足を捕らえられる。日輪刀もその拍子に落としてしまったから、斬って脱出も出来ない。
トドメと言わんばかりに鋭い枝が突き刺そうとしてくるのを見て、私は思わず目を瞑る。
＿＿＿そして、軽い石同士がぶつかったような音と共に手足を解放された私は地面に倒れていた。
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瘉月(プロフ) - ゆずさん» 原作は悲しいこともありますが…それ以上に楽しいこともあるので、楽しみにしています！ (2020年9月14日 21時) (
レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 瘉月さん» ありがとうございます！ 早く原作に入りたくてウズウズしているので、時間を見つけて更新しようと思います。 (2020年9月14日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
瘉月(プロフ) - 本当に面白いです！毎回見てます。頑張ってくださいね！ (2020年9月14日 17時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず | 作成日時：2020年8月8日 21時
