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拾伍話 栗花落カナヲ ページ16

今度こそ買い物に行くというカナエさんと別れ、しのぶさんに連れて行かれたのは庭に面した部屋だった。縁側にチョコンと女の子が座っているのが見えて、ああ、あの子か、と思う。


「カナヲ」


しのぶさんに声をかけられた女の子はゆっくりと振り返る。紫がかった桃色の瞳の女の子だ。可愛い。

しのぶさんによれば、この子は栗花落カナヲというらしい。私の1つ歳上だ。親に売られ、人買いに連れられていたところをカナエさんとしのぶさんに会い、無理矢理引き取ってもらったそうだ。
親から虐待も受けていたらしく、その所為かどうか、自分で何も決められない。食べなさいと言わなければいつまでもお腹を鳴らし、お風呂にも入らない。

「カナヲは可愛いから大丈夫!」とカナエさんは楽観的らしいが、しのぶさんはやっぱり心配なようで。友達ができれば少し変わるかもしれない、というのが彼女の考えだった。


さて、カナヲは相変わらず大きな瞳でキョトンとしのぶさんを見ている。何で呼ばれたのか分からないようだった。
しのぶさんに促され、私はカナヲの居る縁側へと歩み寄る。ニコッと笑って、「初めまして」と声をかけた。


「雲然Aです。よろしくね、カナヲ」


しのぶさんに言われていた通り、彼女は返答をしてこない。明らかに自分に声をかけてきていたとしても、返事をするか否かも決められないのだ。
かと思えば、彼女は銅貨を取り出した。縦にした拳の上に置き、親指で弾く。パシッと掴み手をどかすと、上になっていたのは表だった。


「……よろしく」


これも聞いていた。何も決められないカナヲに、カナエさんがあげた銅貨だ。何をすればいいのか教えてくれる人が居ない時、彼女はこれの裏表で行動を決める。


「それじゃあAちゃん、後はよろしくね」


どこか申し訳なさそうな、ホッとしたようなしのぶさんに会釈を返して、さて、とカナヲに目を戻す。彼女は既に空を見つめていた。その視線を追って、それで気づく。庭に蝶が沢山居た。


「……きれい」


無意識にそう呟く。それからまたカナヲに視線を戻して、ボンヤリとしている彼女の頭にポンと手を置いた。丁度実弥お兄ちゃんがしてくれるみたいに、クシャクシャッと撫でる。
不思議そうな大きな瞳が私に向けられた。

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瘉月(プロフ) - ゆずさん» 原作は悲しいこともありますが…それ以上に楽しいこともあるので、楽しみにしています! (2020年9月14日 21時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 瘉月さん» ありがとうございます! 早く原作に入りたくてウズウズしているので、時間を見つけて更新しようと思います。 (2020年9月14日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
瘉月(プロフ) - 本当に面白いです!毎回見てます。頑張ってくださいね! (2020年9月14日 17時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年8月8日 21時

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