拾壱話 或る朝 ページ12
誰かが屋敷に入ってきた気配で目が覚めた。まだ睡眠を欲している身体を無理矢理起こして、私は目を擦りながら部屋を出る。玄関に向かった。
今日は血を流していない実弥さんにほっと息をついてから、「実弥さん」と声をかける。
「お前もう起きたのか。まだ4時だぞ」
「実弥さんが帰ってきたから起こされたの!」
「うるさくしてねぇだろ」
「気配ですぅ」
「気配ィ……?」
本当の事を言えば、実弥さんがそう呟いて怪訝そうな顔をした。何がそんなに引っかかっているのかと思えば、「寝てても俺が帰ってきた気配分かんのか」と問われる。そんなの当たり前の事じゃないかと思ったけれど、頷いた。
「嘘だろ」
「こんなうそ誰もつきませんよ。当たり前過ぎて」
「当たり前過ぎてって、お前…………」
今度は呆れた表情をされた。
え、どういう事?
「いいかァ、んな事普通の奴は出来ねぇよ。お前は少し特別だ。気配に敏感過ぎる」
「そうだったの……!?」
誰でも出来ると思ってた、と言えば、阿保か、と返される。出来るわけねぇだろ、と。
「そうだったんだ〜」
呟きながら、チラリと顔を窺う。昨日の夜少し気まずくなったとは思えない程普通で、忘れているんじゃないかとすら思うくらいだった。
でも、そんなワケない。
「そうだ、実弥さん。朝ご飯できたら呼びますね」
「そーかィ」
部屋へと戻る実弥さんをチョコチョコ追いかけながらそう言った後、私は台所に行く。
卵焼きと焼き魚、ワカメのお味噌汁をおかずにするつもりである。
作りながらふと、実弥さんの好きな食べ物を知らない事に気が付いた。昨日の親睦会の感じだと特に嫌っている食べ物は見られなかったけれど。
ご飯を食べながら訊くかと思いながら、黙々と朝ご飯を作る。暫くして出来たのは中々上出来だと思えた。
「実弥さーん」
バタバタと実弥さんの部屋に向かって、障子の前からそう声を上げる。気配的に寝てはいないからすぐ来るだろうと、台所に戻ってお皿に盛り付けた料理を居間の机に並べた。
並べ終わった丁度に、実弥さんが居間に入ってくる。少し驚いたように目を瞠ったのが誇らしかった。
「お前本当に料理出来たんだな」
「私うそつかないですよ」
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瘉月(プロフ) - ゆずさん» 原作は悲しいこともありますが…それ以上に楽しいこともあるので、楽しみにしています! (2020年9月14日 21時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 瘉月さん» ありがとうございます! 早く原作に入りたくてウズウズしているので、時間を見つけて更新しようと思います。 (2020年9月14日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
瘉月(プロフ) - 本当に面白いです!毎回見てます。頑張ってくださいね! (2020年9月14日 17時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年8月8日 21時