佰伍話 嘴平伊之助 ページ7
猪頭くんが人一倍働いてくれたのもあって、埋葬は思いの外早く終わった。
我妻君が正一君を離さなかったり鎹鴉が藤の花の香り袋を吐き出したりなど少しゴタゴタしてから、4人で山を下る。先導は、日和と違って偉そうな竈門君の鎹鴉だ。
「それで、君の名前は?」
やっと訊ける、と思いながら、私は猪頭くんに尋ねる。
「俺は嘴平伊之助だよ。よく覚えとけ、青リボン」
「1度訊いた名前を忘れる程失礼じゃないよ、私。それと私の名前は青リボンじゃなくて雲然Aだから、覚えといてね」
濃いなぁ、と思った。
今回の新人隊士って、カナヲと玄弥さんと竈門君と我妻君と嘴平君でしょ? 濃いなぁ。いや、柱も負けず劣らず濃いけどね。
嘴平君は山育ちらしいが、それは家が山の中にあったなんて意味じゃなく、本当に山の中で育ったらしい。本物の野生児だ。
ご両親や兄弟も居らず、他の生き物との力比べだけが彼の楽しみなんだとか。これを聞いた竈門君は行冥さんの様に慈悲の涙を流していた。
彼は鬼殺隊の隊員と力比べをして刀を奪い、最終選別の事や鬼の存在を聞き出した。育手も介さずに最終選別を通ったのは素直に凄いと思うが、その刀を奪われた隊員とやらは鬼殺隊としてどうなんだろう。
鎹鴉が私達を連れてきたのは藤の花の家紋の家だった。竈門君達は負傷しているので、完治するまでここで休息せよ、との事らしい。
「えっ? 休んでいいのか? 俺今回怪我したまま鬼と戦ったけど……」
「良いに決まってるでしょ、竈門君。鬼殺隊そんなに酷くないよ」
「そうなのか?」
「当たり前」
お館様がそんな事させる筈無い。
すみません、と屋敷に向けて声を上げると、小さいお婆さんが出てきてくれた。
「あっ、夜分に申し訳ありません」
「鬼狩り様でございますね。どうぞ……」
お婆さんはすぐさま2部屋用意してくれた。勿論男子3人が1部屋、私で1部屋なのだけれど、どう見ても男子3人の部屋と私の部屋とで広さが同じだ。
「私の部屋、こんなに広くていいんですか?」
「勿論でございます、空柱様」
バレてるらしかった。
191人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時