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佰弐拾肆話 約束はいつからかせつない ページ26

隣に座ってみたらし団子を食べていた無一郎は、私の言葉にコテンと首を傾げた。


「僕そんな事したっけ?」

「したよ。手より先に口で言いなさいって、いつも言ってるのに」

「それは言われた気がする」


全く悪びれない表情で言いながら、彼は2本目を手に取る。そんな無一郎にそっと息をついて、私は三色団子の緑色のお団子を口に入れた。


無一郎はものをあまり覚えられない。それは知ってるけれど、この子は何故か私に関する事は割とよく覚えてくれている。実際、手を出すより先に口で言いなさいと言った事も覚えていたみたいだ。

それなのに昨日言うより先に石を投げたのは、直す気が無いからに他ならないだろう。
鬼を倒す時には、それで全く構わないのだけれど。


「でも。本当に駄目だよ、真っ先に手を出すのは。誰とも仲良くなれないよ?」

「Aが仲良くしてくれるならそれでいい」

「えぇ……。私が無一郎より先に死んじゃったらどうするの」

「…………え」


みたらし団子を食べようと串を自分の口に近づけていた無一郎はその動きをピタリと止め、珍しく瞠った目を私にバッと向ける。
流石の彼も仲良い人が誰もいないっていうのは嫌なんだな、なんて考えていると。


「……A、僕より先に死んじゃうの?」

「……え、そこ?」


思った事をそのまま思わず口にしてしまったが、無一郎はそれに反応せずに、少し泣きそうな焦った目で私を見つめる。
今の論点はそこじゃないけども……こんな顔をさせた責任は私にある。


「死なないように頑張るよ、それは勿論」

「……本当に?」

「勿論。当たり前。……ああ、でも」


私より先に無一郎に死なれるのも嫌だなぁ、なんて。
残される痛みを知っている私は、私が死んだ後無一郎がどれだけ悲しむのか簡単に想像出来るのに、そんな事を思ってしまう。


「でも、何?」

「ううん、何でもない。私は無一郎より先に死なない、ように頑張る」

「断言してよ」

「無理だよ」


果たせるか分からない約束をするのは良くないと、私は今でも思っている。

佰弐拾伍話 おつかい兼訪問→←佰弐拾参話 おしまい



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ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時

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